2.グループ活動「スライドの確認」の概要と学生の反応早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/59―60 60活動の手順は,1)7名ずつの2グループ(出席者14名)になる,2)発表者はPCでスライドを見せながらスクリプトを読む,聞き手(6名のうち1名は交代で時間を計測)は評価シート(評価の該当箇所に〇を付け点数を記入する形式)を記入する,気になったことについてコメントする,コメントを書く場合は評価シートのコメント欄に記入する,3)役割を交代しながらグループ内の全員が発表する,4)教師が評価シートを学生毎に取り纏めて返却する,とした。活動の所要時間は1コマ(100分)を目安とし,持ち時間は1名13分程度(発表8〜9分・コメント5分)とした。課題1)への対応は,①コメントの定型〔事実「○○が○○だった。」+提案「(もっとよくするために)わたしなら○○〇する。」〕を提示し,○○の箇所に言葉を入れてそのまま言ったり書いたりすれば事実を踏まえた提案コメントができるようにしたこと,②教師がグループ間を巡回し,発言の少ない学生に対して定型の前半の事実部分を言い(「目次のスライドが,少し読みにくかったですね。」等),後半の提案部分だけを発言するよう「促しの声掛け」(「もっとよくするためにAさんなら?提案,どうぞ。」等)をして,負担を半減するようにしたこと,③評価シートを併用し,①②の方法で発言が難しかった学生でも,発表者にフィードバックができるようにしたこと,以上3点である。その結果,発言の少ない学生も①の定型を使用してコメントを試みたり,教師の「促しの声掛け」で提案部分を述べたりする姿が見られた。活動の後半になると,余裕のある学生が教師に代わって自主的に定型の事実部分を言っては発言の少ない学生から提案部分を引き出して,グループ内のコメント活動を活性化していく様子も見受けられた。課題2)への対応は,所要時間の制限および上記②で教師がグループ間を巡回する都合上,7名のグループで活動を設定・実施したことである。その結果,クラスの半数程度の成果物を視聴したことで,学生達が「どのような水準のものを作成して発表すればよいのか」を察知し,自らの成果物にどのような改善を加えたらよいのかを判断する機会となったように感じられた。この活動の後,テーマをより焦点化して調べ直したい,根拠を明確にするために資料を再度収集したい等,各学生が手直しに自主的に取り組み,クラス全体の成果物の完成度が高まったように思われた。以上の結果から,課題1)2)に対する上記の各対応の有効性の一端をうかがうことができた。今後も,他のレベルやクラスで同様の検証を継続して,発表内容を改善するための活動が学生達にとって一層,有意義な活動となるように改良を試みていきたい。参考文献鎌田修・ボイクマン総子・冨山佳子・山本真知子(2012)『生きた素材で学ぶ 新・中級から上級への日本語』ジャパンタイムズ.萩原喜美子(2024)「発表内容を共有しコメントし合う場づくり」『早稲田日本語教育実践研究』12,51-52. (はぎわら きみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
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