3.学生の反応と今後の課題早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/57―58 58わった今の“わたし”」欄に決めた漢字を記入し,漢字を選んだ根拠となるような現在の心境,日本語学習の状況,学期の始まりからの変化,今後の計画や進路等について3〜4文程度の説明を書く,5)シートを読んで,学期の初めと終わりの間にあった出来事や心境等について適宜,書き加える,6)2)の色画用紙を二つ折りにした状態で左半分だけを見せながらシートの「学期が始まったときの“わたし”」を読み,次に右半分も見せながらシートの「学期が終わった今の“わたし”」を読んで発表する,とした。シートと手順を教室のスクリーンに投影しながら,教師が色画用紙とマーカーを使用して一通り試行して見せた上で活動を開始した。活動の工夫は,学期を振り返る為の手がかりを時期(学期の初めと終わり)と漢字(象徴する漢字1字)に教師が予め設定したことである。手がかりとして時期を設定することで,全ての学生が同じ時期について焦点化し説明を書き,発表することが可能になり,同時期のクラスメイトの状況・心境について共感したり,今後の参考にしたりできると考えた為である。また,手がかりとして漢字を設定することで,発表している学生が学期の初めと終わりの時期をどのように捉えているのか,どのように変化したのかを全員の学生に一目で理解させることが可能になり,発表の説明を強力にサポートしつつ誤解も回避できると考えた為である。学生達は手順1)〜5)までを18分程,6)を35分程で行った。各自が学期を振り返り,開始時と終了時の自分を的確に表す漢字を選定し,共に学んできたクラスメイトに提示しながら,過去・現在・未来に繋がる思いを伝えて共有しようとする姿が見られ,想定を超える熱のこもった活動となった。今後も,学生達が主体的かつ意欲的に取り組めるような実践活動を考案し,実施していきたい。参考文献鎌田修・ボイクマン総子・冨山佳子・山本真知子(2012)『生きた素材で学ぶ 新・中級から上級への日本語』ジャパンタイムズ.(はぎわら きみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
元のページ ../index.html#62