早稲田日本語教育実践研究 第13号
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3.筆者らの工夫4.今後の課題56早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/55―56学習者の孤独感を軽減し,信頼関係を構築するために,筆者らはフォーラムを活用し,学習者と教師間のコミュニケーションを図った。また,定期的に課題の提出状況を確認し,迅速にフィードバックを行う体制を整えた。特に,各学習者の学習背景や目標を理解し,共感を持ったフィードバックを行うことで,個別対応を強化し,学習者のモチベーションを高めるとともに,自律的な学習を支援することを目指した。試行錯誤を重ねる中で,学習者の努力と成長を適切かつポジティブに評価すること,すなわち「褒める」ことの重要性に気づいた。オンライン形式でフィードバックを行う際には,まず誠実さを持って具体的に褒めることが大切である。例えば,作文のフィードバックでは,単に「良い文章ですね」と漠然と褒めるのではなく,「○○さんの考えがよく伝わっています。特に,○○さんの考えをサポートする具体例が効果的で,とてもいいと思います。段落の構成を見直せば,さらに良い文章になるでしょう。」というように,学習者の作文のどこが優れているかを具体的に示すことで,学習者は自身のライティング力を認識しやすくなり,褒め言葉がより効果的になる。さらに,一貫性を保ちつつ適切なフィードバックを行うことが,学習者のモチベーションを高め,信頼関係を強化するために重要である。「一貫性を保って褒める」とは,特定の基準や方針に基づき,安定した態度で褒めることを意味する。ここでは,「総合日本語4」のコース目標と評価基準に従い,学習者が目標に向かって努力している点を見逃さずに褒めることである。また,結果だけでなく,努力やプロセスを評価することによって,学習者は自己成長を実感し,学習への意欲が一層高まる。例えば,学習者が改善に取り組んでいる場合,「前回のフィードバックを元に,自分で改善点に取り組んでくれているのがよくわかります。その努力がとても重要で,今後の学習にも役立つと思います。ぜひこれからも続けましょう!」と評価するように心がけている。ただし,過度に褒めることには注意が必要である。過度な褒め言葉を使うと,言葉の重みが失われる恐れがある。褒め言葉に対する反応は学習者によって異なる可能性がある。しかし,完全オンライン環境では,学習者に関する情報が不足しがちである。このため,学習者の心に響くフィードバックを行うことがより難しくなっている。褒め言葉を含め,オンライン環境におけるフィードバックに対する研究と実践を重ねていくことが重要だと考える。参考文献上村貴世子(2021)「入門日本語授業のオンライン化―対面授業のオンデマンド化における一考察―」『学習分析学』4,7-17.除村健俊・小林真也・飯尾淳・井上雅裕(2022)「オンライン授業の現状と将来―大学教員から見たCOVID-19による授業の変化と学生への影響―」『プロジェクトマネジメント研究報告』2-1,16-23.(みずた かほ,早稲田大学日本語教育研究センター)(みよし ゆうこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(ちょん ゆんじょん,早稲田大学日本語教育研究センター)

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