4.まとめ54早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/53―54ようハイライトだけにし,正解をあえて書かなかったこともあった。対面授業でそれらを共有し,オンデマンド授業での個別の学びを協働的な学びにつなげるよう心がけた。次に,課題における誤りの文の共有の仕方については2つの方法を試みた。①誤りの文だけをスライドなどで全体に提示共有した後,学習者側から誤りと思われる点を指摘してもらう方法,②課題シートの文型の意味・用法を再確認したあと,学習者の文を発表してもらい,検討後,新たにその文型の例文作りをする方法である。このようにクラス全体で共有することで,学習者に新たな気づきが得られ,理解も深まり,学びが広がった。課題シートの評価については,取り組みの状況により3点満点の内容点をつけることになっており,内容点を学生に知らせるかどうかは任意である。担当教師の一人は内容点を知らせることにより,学習者の意欲を高める工夫をした。具体的な方法として,コース初日の授業で評価の概要を説明し,第1回目の課題シート返却時から,内容点(3,2,1点)をよりイメージしやすいようにA,B,Cの評価で表記した。そして授業で評価基準を具体的に説明後,次回からも評価を知らせると告知した。これにより,課題に対して注意深く取り組むケースが増えた。また最後の授業では,学生たちから内容点をA,B,Cの評価で知らせてもらったことで,学習意欲が高まり良かったという声があがった。オンデマンドと対面とのハイブリッド型授業における課題の返却・フィードバックの工夫として,課題の返却方法,誤りの全体共有,課題の評価における工夫が挙げられた。それらの工夫の意義として,以下の3つが考えられる。1)オンデマンド授業における個別の学びを,対面授業で協働の学びにつなげる。2) オンデマンド授業における学びを対面授業で共有することは,学習者に新たな気づきを与え,理解を深め,学びを広げる。3)オンデマンド課題の評価を知らせることで,意欲を高める。オンデマンド授業での個別の学びを,教室での協働的な学びへ導き,さらに教室で引き出された学習意欲を持ってオンデマンド授業に取り組めるようにすることが重要である。今後,ますます学習環境は多様化,個別化していくだろう。学習者が主体性をもって学習し,学び合えるように支援していきたい。参考文献独立行政法人国際交流基金編著(2017)『まるごと 日本のことばと文化 中級2 B1』三修社.(あんどう ひろこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(かとう まみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(すずき しゅうこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(とんしょ みつえ,早稲田大学日本語教育研究センター)(ふじもと ともみ,早稲田大学日本語教育研究センター)(まつもと けいこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
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