早稲田日本語教育実践研究 第13号 科目名:コミュニケーションのための敬語表現2-3 レベル:初級1・2 /中級 3・4・5/上級6・7・8 履修者数:35名本科目は,敬語を基本から学びたいと考えている日本語初級後半レベルから中級前半レベルの学生を対象としている。日本では様々な場面1)で敬語が使われているため,理解できなければ問題が生じることがあり,少し長く生活をしていると,敬語を使う場面も増えてくる。そのため,「敬語の仕組みと働きを理解すること」,「日常生活で敬語を使った基本的なコミュニケーションが取れるようになること」の二つを授業の目的としている。敬語は尊敬語,謙譲語,丁寧語の3種類の分け方と,尊敬語,謙譲語Ⅰ,謙譲語Ⅱ(丁重語),丁寧語,美化語の5種類の分け方があるが,本科目では「敬語の指針」2)に基づき,5種類を提示している。5種類と「ご説明いたします」などの謙譲語Ⅰ+謙譲語Ⅱと,「こちら・そちら」などの敬語と一緒に使用する丁寧な言葉について学び,敬語でのコミュニケーション能力を養うことを目指している。1コマの授業は,①その日に学ぶ敬語の説明,②人間関係と場の意識化,③クイズで理解度確認,③学生が日常生活で出合う場面で,コミュニケーションを行う口頭練習,④まとめ,という流れで行っている。2-1.人間関係と場の意識化2,3レベルの学生は敬語について少し勉強をしてきたり,日常生活で敬語を聞いたりしているので,「申す」「まいる」などの表現は知っている。しかし,それらが「だれに,どのような場で,どうして使うか」ということが理解できていない。そのため,身の周りの人間関係や場から考え,ペアやグループで考えを述べ合い,意識化することから始める。例えば,クラスでの自己紹介では,まず隣の席の人に自己紹介をするときと,クラスメート全員の前で自己紹介をするときの人間関係と場の違い,気持ちの違いについて考える。それらの違いについて考え,意識することで,よく理解できなかった丁寧語の「〜(から)来ました」は丁寧に述べるだけで,謙譲語Ⅱの「〜(から)まいりました」は場と気持ちが改まっていて,丁重(丁寧+改まり)に述べるということが理解できるようになる。尊敬語についても目上の人とコミュニケーションを取るときと,親しくない隣の席1.授業の目的2.授業の概要実践紹介49福島 恵美子人間関係と場に応じた敬語コミュニケーション
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