2.実践の成果と今後の課題早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/47―48 48表1 各Stepのトピック(一部)(やなぎだ なおみ,早稲田大学日本語教育研究科)Step1日本の生活で一番びっくりしたことは何ですか。/どうして日本に来たんですか。Step2夏休みにキャンプに行くなら,海と山とどちらがいいですか。/服を買うとき,オンラインで買いますか,お店で買いますか。Step3結婚する前に同棲したいですか,したくないですか。/子供が自分のスマートフォンを持つことに賛成ですか,反対ですか。実践を終えて,学生に授業は楽しかったかと質問したところ,回答した27名全員が「非常に楽しかった」「楽しかった」と回答した。その理由は,「授業で話すチャレンジが毎週できて,準備の時間が長くなくて,話す時間がもっと長かったです」「現実世界のトピックで本物の日本語会話力を楽しんでできる」「いろいろな国の文化や習慣を理解できました」などであった。また,授業は役に立ったかと質問したところ,全員が「非常に役に立った」「役に立った」と回答した。その理由は「最初の授業よりたくさん上達しました。色々な単語や文法を教えてもらって,私の意見も最初より説明しやすくなりました」「授業ごとに違う面白い話題が出てきて,私の話はどんどん増えていきました」「日常生活の中で,いろいろな話す言葉を勉強しました」などであった。以上の学生の反応から,本実践は概ね好意的な評価を得たことがわかる。また,その評価の理由からは,学習者が本実践を楽しんでいたこと,自身の日本語力の向上を実感していたこと,本実践が意味のあるコミュニケーション活動であったこと,などがうかがえる。学習者が言いたいことを言えるようになるためには,日本語を学習者一人一人の経験や感情などの深い部分と結びつけて表現する練習をくり返し行う必要がある(杉浦2009)。本実践内では,学期開始当初,話すことに自信のなかった学生が,活動をくり返すなかで徐々に翻訳ツールなどを手放し,相手とのコミュニケーションに集中していく様子も観察された。また,一人で話すことから徐々に対話,やりとりへと段階的に活動の難易度を上げていくことで,話すことへの不安が減っていく学生も多く見られた。本実践のようなコミュニケーションは得意不得意もあり,慣れるまでに時間がかかる学生もいる。今後は,学生一人ひとりの状況に応じて具体的にどのようなサポートが提供できるかを検討していきたい。参考文献杉浦千里(2009)「初級学習者の「話す力」を伸ばすための試み」『2009年度実践研究フォーラム報告』https://www.nkg.or.jp/event/.assets/event_2009_12.pdf(2024/9/10確認)□田直美(2010)「初級レベルの話す活動−即時に話す・聞く力の養成を目的とした「デイリートーク」 −」『日本語教育方法研究会誌』17-1,52-53.
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