早稲田日本語教育実践研究 第13号 科目名:スピーチ・インタビュー・ディスカッションで伸ばす日本語の力2 レベル:初級1・2 /中級3・4・5/上級6・7・8 履修者数:31名初級を終えても,言いたいことをうまく伝えられない,会話で既習文型を十分に使いこなせない,あいづちがなかなか使えない,相手の話をふまえて自分の意見を述べられない,などの問題を抱える学習者は少なくない。□田(2010)はこのような課題を解決するために,短い時間であっても,くり返し行う,即時的なコミュニケーション活動が総合日本語コースに必要であるとして,授業内の各10分程度を使って「デイリートーク」という実践を行った。本実践は□田(2010)をもとに100分の授業用にコンテンツを追加し,整備したものである。本実践は,初級後半の学生を対象に会話を自律的に管理する能力を段階的に伸ばすことを目的とし,中級以降に向けたコミュニケーション能力の基礎力の養成を図るもので,①学習者の経験や感情などと日本語を結び付ける自己表現の活動,②学習した文型や語彙を学習者が自ら統合して使う活動,③聞き手としてのふるまいも実践できる活動,④準備時間がほとんどない即時的な活動,という4つの特徴を持つ。本実践は初回ガイダンスの後,Step1を3回,Step2を4回,Step3を5回,最終回はふりかえりを行う。「Step1スピーチ」では,まとまりのある談話構成力を養成するために独話の練習を行う。「Step2インタビュー」は,Step1の独話を組み込んだ会話練習となっており,あいづちや確認などの聞き手としてのストラテジーにも焦点を当てる。「Step3ディスカッション」では,Step1と2の力を総合的に伸ばすため,意見交換の談話の練習を行う。本実践はこのように独話から対話へ徐々にレベルが上がるように設定されている。う」(日本語での即時的コミュニケーションの実践:授業内),「チェックテスト」(各Stepの到達度評価:授業内),「ふりかえり・書きましょう」(Stepのふりかえりと次Stepの目標設定・話したことの言語的ふりかえり:授業外)で構成される。「話しましょう・聞きましょう」は基本的にペアで行い,毎回ペアを替えたり,他のペアの会話を観察する活動を取り入れるなどしている。トピックは,Step1は身近な話題のもの,Step2は意見の対立が生まれやすいもの,―即時的なやりとりのくり返しと段階的なしかけ―1.実践の概要各Stepは「説明」(各Stepの目的と手順の共有:授業内),「話しましょう・聞きましょStep3は学生の意見を取り入れたものを複数提示し,活動の直前に選ばせた(表1)。実践紹介47□田 直美会話の基礎力を養成する
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