3.学生からのアンケート結果4.今後の課題早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/45―46 46していたため,彼らには「あなた達は使用する日本語のレベルに気を付けて,クラスメイトを助けてください」と告げて参加してもらった。実際,グループ活動の時には積極的に話して手本を見せたり,話すのが苦手なクラスメイトに「いつ行きましたか?」「どんな味でしたか?」等と簡単な日本語で質問をして,発話を促してくれたりした学生が何人もいた。それに助けられていた学生もいた一方,周りの学生と自分を比べて自信をなくしてしまったり他の学生の話が理解できなかったりして,結果的に発話が少なくなってしまっているように見えた学生もいた。作文については授業時間内で書けなければ残りは家で書いてもよい,としたことで,各自自分のペースでストレスなく書けていたようである。授業時間中には積極的に質問をしてくる学生も数名いたが,大半は黙々と取り組んでいた。また,教員からのフィードバックについて質問を受けたり,学生が「自分はこう書きたかったんです」と相談に来ることはまれで,教員が直した文法や提案した語彙,言い回し等の用法につき,どの程度理解した上で吸収してくれたのかを疑問に感じるところもあった。学生からのアンケートを見ると,「効果的なフィーバックがあった」に対して回答者全員が「とてもそう思う」と回答しており,あまり質問や反応を返してこなくても,学生側はフィードバックにある程度満足していたことが伺えた。「自分達の好きなことを話させてくれたので,本当に日本語が練習できた」「日本語を練習するのに『安全』な場所だと感じた」とポジティブな意見もあった一方で,学生のニーズにはばらつきがあった。例えば,「もっと作文を書きたかったか」「ブレインストーミングの時間は長すぎると感じたか」の質問には「そう思う」と「そう思わない」の意見がきれいに分散してしまった。現状では,授業時間の使い方や課題数について,少なくともアンケート回答者の大多数が完全には満足していない状態であると言える。本科目はまだ初めての学期を終えたところであり,改善するところは多くある。まず,上で述べた学生の異なるニーズに対しては,シラバスや初回オリエンテーションで授業内の時間配分等をより詳しく説明し,各学生が自分のニーズに合っているかを判断しやすくしたい。また,グループ活動の時に「話す」ことに重点を置きすぎてしまい,「聞く側」の指導が足りていなかったと感じている。「ブレインストーミングなので,アイディアを掘り下げるために色々質問してあげてください」と言うに留まってしまったことで,特に日本語の弱い学生が置いていかれがちであった。今後は分からない言葉や表現,知らない固有名詞が出てきた時等に,臆せず相手に説明を求められるような指導,そして学生にとってそれがやりやすい雰囲気作りを努めて行っていく必要があると思っている。(こまつ ひろこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
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