早稲田日本語教育実践研究 第13号 科目名:「私」を表現しよう2 レベル:初級1・2 /中級3・4・5/上級6・7・8 履修者数:35名1-1.科目設置の趣旨この科目は,初級の学習者が今まで勉強してきたことや他のコースで習ったことを用いて自分自身のことを話したり書いたりすることで,習ったことをより自然に使いこなす実践練習をしながら,日本語での自己表現を楽しんでもらうことを目的として設置した。筆者が過去に担当した科目では,時間の制限もあり「新しい文法を習う」⇒「使い方を覚える」⇒「語彙を入れ替えて練習する」⇒「短い会話をする」に留まってしまうことが多かった。そして,いざ「自分のことについて話してください」と言うとなかなか文が口をついて出てこない学生を多く見てきた。文法練習のための会話や短作文ではなく,より制限のない中で今まで習ったことを組み合わせながら自由に話して書いて,それにフィードバックを得られる機会,そして「自分は日本語でこんなことも言えるようになったのだ」と達成感を感じられるようなコースを設けたいと思った。1-2.授業内容授業は週1コマで,2週間を1セットとする構成で行った。1週目にモデル作文を読み,テーマに沿って自分自身の経験や意見をグループで話し合うことを行い,2週目に1週目と似ている,しかし異なるテーマについてグループで話し合い,話し合ったことを,各自作文にする活動を行った。例えば,1週目は「自国での旅行」2週目は「日本での旅行」,1週目は「日本の電車」2週目は「日本でびっくりしたこと」等をテーマとして扱った。これを5セット繰り返した。教員は,モデル作文に入れておいた当該テーマを話すのに役立つであろう文法や表現の確認と解説を行い,学生が話している間に机間巡視して気付いたこと等を板書してクラス全体で共有した。また,学生が提出してきた作文はフィードバックを記入したものを次の授業開始時に個別に返却し,続けて全体に向けてのフィードバックも行った。学生が行う課題としては,コースを通して5回作文を書き,最後に1回,スクリプトを書いた上での口頭発表を行った。作文は毎回字数を増やしていき,「300□350語」から始め,最後の作文は「550□600語」とした。本コースのレベルは「2」であるが,実際にはそれよりも高いレベルの学生が多数履修1.授業概要2.実際の授業の様子45実践紹介小松 浩子話して書く活動を通した実践練習
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