早稲田日本語教育実践研究 第13号
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早稲田日本語教育実践研究 第13号   科目名:自己表現でクラスメイトと日本語を学び合う2  レベル:初級1・2 /中級3・4・5/上級6・7・8  履修者数:35名1-1.どのようなクラスか以下は学生に配布するシラバスに示しているものである。(2024シラバスより)このクラスは,クラスメイトと自分や自分の身の周りのことを話したり聞いたり,またディスカッションをしたりします。このような活動の中で日本語を主体的に学びあって自己表現する力をつけていきます。この授業で教師が何かを教える,ある基準で正解を示す,ということはない。授業は次の3つのバージョンに分けられ,各回で問いを立てて学生同士で活動していく。①1〜4回目で自分のこと(好き・嫌いリスト・分析,9windows(自分を語るキーワードを9つの窓に示してインタラクション))②5〜8回目で自分と他者の関係(大切な人のこと,哲学的質問に答える)③9〜14回目で自分を取り巻く社会の中での自分(ケーススタディ,クロスロード(ある行動を決断する際,自分はどちらの道を選ぶかを決めてディスカッションする),東京探検)。1-2.授業活動授業活動は,各授業時に課題として教師から出された問いに一人一人が答え,その答えを持ち寄ってグループ・インタラクション(回によって人数,メンバーは違う)を行い,それを踏まえて最初に出した自身の答えを再考し,新たな答えをまとめて授業終了時に提出するということを基本的に行う。最終バージョンではグループ・ワークとして「ミニ・トリップ」の計画から実行・発表・相互評価まで行う。授業の根幹にあるのは,ことばを使う意味,教室に集まり,日本語でやり取りする必要性を考え理解し体感していくことである。学生が日本語を学ぼうとする際,ここまで生きてきた環境,性格,どのように生きたいのかは一人として同じではないだろう。しかしどの学生も「今」を生きている人間である。人間は,<じんかん≒人と人との間>とも読め,その「あいだ」は授業という「場」で共有される。その「場」で自分とクラスメイトを認めあい,間違っているかもしれないがわたしはこう考える,こう思う,と意見を自由―「今の自分」を発信しあい,必要な日本語に気づく―1.授業概要43実践紹介江原 美恵子問いに答えることで「自分の日本語」を創っていく

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