早稲田日本語教育実践研究 第13号 科目名:会話1 レベル:初級 1・2/中級3・4・5/上級6・7・8 履修者数:12名早稲田大学日本語教育センター(以下,CJL)の会話1は,4技能を総合的に学習する総合科目群に含まれる技能科目である。対象は初級前半の学生で,学習目標は,日常生活において遭遇する場面で会話ができるようになることである。授業担当者であるインストラクターは,コーディネーターによって作成されたシラバスに沿って,CJLのオリジナルテキストを用いて授業を行う。コロナ禍以前の対面授業では,テキストのトピックに相応しい口頭表現をロールプレイで練習したが,2020年に新型コロナウィルス感染症が拡大してからこの常識は覆された。会話の授業もweb会議システムzoomを用いた授業形態に移行し,学生はこれまでの「当たり前」をオンラインで学ぶことになり,戸惑いを隠せない様子であった。本稿では,コロナ禍の2021年度春学期以降の会話1について紹介する。学生が期待する会話の授業は,教室でインストラクターやクラスメートと日本語をたくさん話して,自然な日本語を身に付けることである。充実した説明よりも,より多く発話することが求められる。また,コロナ禍で友人に会ったり,アルバイトをしたりすることができないため,日本語に触れる機会はオンライン授業だけであった。このような状況下で上記の学習目標を実現するために,インストラクターは複数のアプリを使い,学生に予習を促し,授業中により多くの会話を聞き,発話を増やす工夫をした。インストラクターと学生が異なる場所に居て対面と同じように意思の疎通を図るためにPadletとDrawboard PDFのアプリを使った1)。一つ目のPadletは最も一般的なシェルフのボードを使った。筆者は会話1の授業の冒頭で,100分授業のうち3分程度の教育動画(NHK Worldのやさしい日本語Easy Japanese)2)の視聴を取り入れている(豊田 2024)。その動画の予習ができるように,Padletのシェルフに次回授業で扱う動画のリンクを貼り付け,視聴を促した。ほとんどの学生が動画に興味を持ち,授業前に視聴していた。また,―アプリを駆使する―1.これまでの会話の授業2.学生が期待する会話の授業3.アプリを使った授業実践紹介37豊田 晶子オンライン授業で口頭表現を増やす
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