2-2.授業の特徴本科目では,授業に様々な工夫を加えているが,本稿では以下の4つを紹介する。会話の音声特徴をWasedaMoodle(大学LMS)のフォーラムに記入し,授業で共有する。「会話スキット」では学習者にとって身近なトピックを取り上げている。の様子を録画,最終授業で録画鑑賞会を行う。③のボランティアに関する詳細は次節で述べる。2-3.ボランティアと行う活動中村(2007)では,学生19名を対象とした発音クラスの授業報告がなされており,クラスの人数が多い場合,1人ずつの個人指導には限界があり,教師の負担が大きくなることが指摘されている。また,戸田・大久保(2014)も対面授業における発音指導の難しさを指摘している。本科目では,毎学期5,6名のボランティアに毎回授業に入ってもらい,教師とともに学習者の発音チェックと発音練習を行ってもらっている。これにより,学生は授業で多くの発音チェックの機会を得ることが可能となっている。また,本科目の最大の特徴といえるのは,ボランティアが中心となったグループ活動である。ボランティア1人と学生5,6名でグループになり,発音練習で扱った表現を使いながら会話を行い,発音の意識化を促している。この活動によって,学生が日本人の自然な発音に多く触れることも可能となる。本科目では学期末に最終レポートを課しており,学生の学びを確認することができている。また,多くの学生から「ボランティアとたくさん話すことができて良かった」,「ボランティアが手伝ってくれて嬉しかった」など,ボランティアへの感謝の声が寄せられている。日本人に自分の発音が伝わったという実感を得て,自信に繋がったと思われる。なお,ボランティアの参加による授業運営で難しい点は,ボランティアが急に当日不参加となった場合,予定していた活動が困難になることである。今後,ボランティアの参加人数の変動に柔軟に対応できる活動の在り方を検討していきたい。参考文献戸田貴子・大久保雅子(2014)「新しい音声教育実践における学習者の学び―オンデマンド併用授業による発音学習―」『早稲田日本語教育学』14,1-18.中村則子(2007)「発音クラス授業報告」『東京外国語大学留学生日本語教育センター論集』33,179-189.早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/35―36 36① 授業にシャドーイングを導入し,授業外でもシャドーイングを活用した自律学習を促す。② 毎回の授業の予習として「会話スキット」の音声ファイルを学生に提供し,会話内容と③ ボランティア日本人学生(以下,ボランティア)との会話を通して発音の意識化を図る。④ 総復習の活動として,ボランティアに「伝わりやすい発音」でインタビューを行い,そ3.まとめと今後の課題(おおくぼ まさこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
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