早稲田日本語教育実践研究 第13号
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31ショート・ノート三好裕子/語を使えるように学ぶための「言葉の練習問題」ぱいにする」という意味で使えるかどうかという点で話し合いが進んでいた。小さい容器だけだという意見に対し,教科書に「プール」の例が出ていることに気づいた学生が「プール」の例があるから池の場合も使えるだろうと言い,「〇」という答えになったとのことであった。フォローアップインタビューで,助詞について確認しなかったのかを尋ねたが,このときは意味のことだけを考えていて,助詞のことは考えていなかったとのことであった。クラスBの実際のインタビューでの話の一部を下に示す。Sは協力者,Rは調査者である(以下,同様)。S1 : 調べた辞書は「水が池を満たす」という例文がないので,ええと,小さいものだけが,例えば「このコップをミルクで満たした」という。はい,そうです,だから私はなんか×だと思いました。S1 :はい,そうです。S2 : ええ,わたしはテキストでプールと「満たす」は何か,使えますので,そしてなんか,プールと使いますので,うん。S1 : えっと,S2さんの意見は,なんかこう,プールのときは使えると言ったので,えっと,池とプールはなんか,えっと,池も使えると思いました。ならなかったのかな?助詞については。S3 : はい,はい,その時は,ただ池に使えるかどうか,調べたので。この例で,クラスBが正解に至らなかった理由は,最初に注目した点の問題が解決すると,その他の点にまで注意が及ばなかったためであった。学習者は一つの点に注目して検討していると,その点に意識が集中し,その点だけで判断してしまい,他の面にまで意識を向けることが難しいことが分かった。3-1-3.「見直し」の問題における話し合い問題:ダムの建設計画は,経済状況の悪化で,計画を見直しを迫られている。(  )   *正解は「×」で,「計画を見直し」を「計画の見直し」に直す。この問題においても,クラスAの担当グループは「×」で「を見直し」の「を」を「の」に直すと正しく答えたのに対し,クラスBの担当グループは「〇」と誤って答えていた。クラスAのグループでは,一人が「を」が2回使われていることに違和感を持ち,他の学生が「何かの見直し」という言い方を聞いたことがあると述べ,さらに,もう一人がネットで「計画の見直し」という表現が使われていることを見つけたことで,やはり「を」を「の」に変えるべきだということになったとのことであった。クラスAのグループのR :あ,はい,「コップをミルクで満たした」っていうのがあったのね。R :S2さん,S3さんはどうですか。R :プールと使ってるから大丈夫と思ったのね。R : ここの「池に」,本当は「池に」じゃないんですけど,そこについてはあまり気に……中略……

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