早稲田日本語教育実践研究 第13号
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2.調査3.結果29ショート・ノート三好裕子/語を使えるように学ぶための「言葉の練習問題」際は2セクションに分け,17名のクラスにしていた。1学期の授業回数は15回であるが,この指導に当てるのは15回のうち10回で,1回の指導時間は60分程度であった。問題を行う際は教師の指示により参加者を3,4人のグループに分け,各グループに担当する問題を割り当てた。1つの問題を1グループが担当し,グループでの話し合いの結果である答えをgoogle documentの問題シートに書き込むようにさせた。全問題の解答が出たところで,グループの代表者が答えの理由を発表,教師が解答・解説を行った。グループワークは,その利点として,学習者間で積極的に情報交換が行われ,学習者の達成度を高め,学習意欲を高めることができると言われている(Slavin 1996, Dörnyei 1997)。グループでの話し合いの中で様々な点について検討することにより,より多くの気づきが得られると同時に,授業を活性化し,学習意欲を高めることができると考えられることから,グループワークを取り入れることにした。1-3.指導の実際と学習者の反応問題を使った指導に対する学習者の反応は良好で,毎回グループでの話し合いが活発に行われていた。学期の終わりにアンケートを行ったところ,過半数の学生から「とても役に立つ」という好意的な評価を得ることができ,その理由として回答者全員が「知っていると思っていた単語について知らなかったことに気づく」点を挙げていた(三好 2022)。問題自体の効果測定は行っていないが,問題での指導を開始した当初は気づかなかった点に気づくことが増え,気づきが得られていることがうかがわれた。次第に簡単な品詞の誤りなどには確実に気づくようになったため,徐々に問題の難易度を上げて行った。調査はグループでの話し合いの内容を分析するもので,問題を使った授業の最後の回に当たる第20課の指導の際に行った。Zoomを用いたオンライン授業であったため,許諾を得た上でブレイクアウトルームでのグループの会話を参加者に録音してもらい,フォローアップインタビューで録音を流しながら何を話していたのかを説明してもらった。インタビューは日本語で行ったが,ブレイクアウトルームでの会話はほとんどタイ語だったため,タイ語の分かる日本人教師にサポートを依頼した。本稿では,「言葉の練習問題」をより有益なものにするための改善点を知ることを目的に,語の使い方の正誤判定問題で誤った答えを出した問題について,話し合いの分析を行う。具体的には, 2クラスのうちの一方が誤った問題3問(「伴う」「満たす」「見直し」の問題),および両クラス共に誤った問題1問(「解明する」の問題)を対象とする。調査対象クラスをそれぞれクラスA,Bとし,誤りの見られた上述の4問についての話し合いを,2クラスを対比させながら紹介する。

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