早稲田日本語教育実践研究 第13号
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早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/27―34 28図1 「言葉の練習問題」の語の使い方の正誤判断問題の例語彙ドン Lesson 20 練習問題問題1  それぞれの言葉の使い方が適切なものに〇,適切でないものに×をつけてください。1.著しい 1)最近,ゲームを長時間することで,小学生の視力の低下が著しいそうだ。(  ) 2)彼女はいつも派手で著しい格好をしている。(  ) 3)大阪でコロナの患者が著しい増加しているそうだ。(  )2.伴う 1)休日には家族が伴って買い物に出かける。(  ) 2)この台風は強い風と雨を伴っている。(  ) 3)時代の変化を伴い,人々の意識も変わった。(  )3.満たす 1)きれいな水が池に満たしている。(  ) 2)ごみ箱の中がごみで満たされている。(  ) 3)美しい音楽を聴いて,心が満たされた。(  ) 4)彼はルックスや学歴など,私の結婚相手の条件を満たしている。(  )問題2 下線の言葉の使い方の適切なものに〇,適切でないものに×をつけてください。1.この植物は主に北海道で分布している。(  )2.駅に近い新築マンションだから,1か月1万バーツは妥当の額だろう。(  )3.A教授は,ブラックホール(black hole)の謎を解明した研究に取り組んでいる。図1は第20課の問題の一部で,本稿で分析対象とした語の使い方の正誤判断問題である1)。問題では,学習者が犯しがちな誤りを含む文を多く提示し,正誤を判断させるとともに,誤りの理由と修正方法を考えさせた。これは,「語彙は訳語を覚えればよい」という確信を持つ学習者に,既知語について知らない点があることに気づかせ,語彙学習において注目すべき点への「気づき」を促すためである。また,「気づき」のためには否定証拠が重要であることから,誤りの例をあえて提示し,その理由を考えさせるようにした。語彙学習の際に注目すべき点としては,語彙的側面では「意味」「共起関係」,文法的側面では「品詞」「助詞」「サ変動詞としての使用の可否」「動詞の自他」「受身形・使役形での使用の可否」などがあった(三好 2022)。1-2.対象クラスと指導方法対象としたタイの大学の日本語主専攻3年生のクラス2)は,全員が大学入学時に日本語が既習で日本語能力試験N4レベル以上の日本語力を持ち,3年時には多くがN2また(  )はN1に合格している。学生数は1学年34名(調査実施日の参加者は32名)で,指導の

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