早稲田日本語教育実践研究 第13号
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早稲田日本語教育実践研究 第13号  語の使い方を学ぶための「言葉の練習問題」を作成し,グループでの解答のための話し合いの後に解説する方法で指導した。対象語の使い方の正誤判断問題では,様々な語についての問題を行うことで,語の使用の際に注目すべき点への気づきが得られ,語の使い方の誤りを指摘できるようになっていった。しかし,回を重ねても正解できない問題があり,そのような問題での話し合いを分析した結果,学習者は複数の点に同時に注意を払うことが難しく,一つの点に注目すると,その点についての適切さのみで判断していたことが分かった。また,「語の使い方」という問題の主旨から外れた問題が混ざっていたことが誤答の原因になっていたことも分かった。  キーワード: 語の使い方,練習問題,気づき,注目,グループワーク1-1.「言葉の練習問題」とは1-1-1.「言葉の練習問題」の目的語の適切な使用のためには語の意味のみでなく,品詞や使用の際の語形等,様々な面の知識が必要である。しかし,一般に,語彙学習は学習者の努力に任され,訳語を覚えるのみで,使用できない既習語が増えていく傾向がある。実際,筆者が授業を担当したタイの大学の日本語主専攻の学生は,意味は知っているが使えない語が多く,学生の書いた文には不適切な語の使用が目立った。そこで,語の使い方を学ぶことを通し,適切に使用できる語彙を増やすと同時に,語の適切な使用のために学習の際に注目すべき点への気づきと理解を促すことを目的として,語の使い方を問う「言葉の練習問題」(以下,問題と呼ぶ)を作成した。1-1-2.「言葉の練習問題」の内容問題は,タイの日本語主専攻3年生クラスの作文授業の教材として作成した。対象の作文クラスはレポートの作成が目標の一つになっているため,『語彙ドン! ―大学で学ぶためのことば―vol. 1』をテキストとしている。テキストは20課まであるが,問題はテキストの課ごとに作成し,各課の目標語のうち10〜15語を取り上げた。―解答のためのグループでの話し合いの分析―要旨1.はじめにショート・ノート27三好 裕子語を使えるように学ぶための「言葉の練習問題」

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