早稲田日本語教育実践研究 第13号
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①②③④ショート・ノート小宮千鶴子/連語への気づきを促す指導の試み 5.「私の連語集」の課題文から連語をとりだす(1) 文から連語をとりだす(2)文章から連語をとりだす(1) 切れる<連語を選ぶ> 熱心に祈るチャンスを与える練習)次の文から下線のある動詞の連語をとりだしてください。①高校時代の先生とは,あまり連絡を取っていない。②夜中まで大きな声で歌って,ご近所に迷惑をかけてしまった。③海に資源が眠っていても,利用するには高い技術が必要だ。練習)次の文から下線の名詞の連語をとりだしてください。例1) 私の留学ビザは,9月に切れた。 ⇒ ビザが 例2) 生活のための収入は,中国語を教えて得ている。 ⇒ 収入を 得る★連語には「~は」ではなく,基本の「~が」「~を」を使う。彼は 祈った。毎日熱心に神様 どうか私にチャンスをお与えください。 (1)受身の連語をとりだす日本は海に囲まれているため,魚や貝などの漁業資源に恵まれている。魚には良質のたんぱく質が多く含まれ,肉よりも健康に良いと人気がある。しかし,漁業資源を守るため,認められた時期にしかとれない魚もある。1.海に囲まれる2.漁業資源に恵まれる3.魚にたんぱく質が含まれる4.認められた時期23図3 文章からの連語抽出指導の教材部の名詞が「は」によって主題化されたり,その名詞とそれが係る動詞とが隣り合わず間に他の単語がある場合で,「ビザが切れる」と学習者が適切に連語を取り出すのは,やや難しい。3回目の「文章から連語をとりだす(1)」は,用法指導で提示した連語を用いて筆者が作成した文章から連語を取り出す練習である。図3の③は第1文の係り受け関係をすべて図示したもので,学習者にはすべての連語を覚える必要はなく,覚えたいと思う連語のみ「熱心に祈る」のように取り出して連語集に載せるように指示した。4回目の「文章から連語をとりだす(2)」では,生の文章から連語をとりだす際の注意点を説明した。図3の④は受身になることが多い動詞についての教材で,「海に囲まれる」のように受身のまま取り出したほうが自然な日本語が学べるとした。その他,「は」による主題化があり省略のある文章から連語を取り出す場合や,「風邪薬を飲む」を「薬を飲む」に変えるなど利用しやすい形に変える提案も行った。5回目の宿題は,生の文章から好きな連語を取り出す課題である。オンラインで提出された宿題は,個別にフィードバックし,誤りの多かった連語などについては,6回目にクラスで解説した。「私の連語集」の課題は,「私の連語集」の作成とその一部についての発表という2つの課題からなる。「私の連語集」の作成目的は,好きな文章から好きな連語を適切に取り出せるようになることである。「私の連語集」の課題では,好きな文章から好きな連語を30選んで指定の書式に連語,読み方,母語訳,用例文と出典を入力する(表3)。これは学習する語彙をノートにまとめる,気づきを促すための活動の1種で,学習方法の提案でもある。対面授業では,学習者が料理・音楽などのテーマ別グループに分かれ,各自が小テーマを決めて連語集を作成した。オンライン授業では,個人別に連語集を作成した。「私の連語集」の発表は,最終回のクラスで「私の連語集」の一部の連語(対面授業で

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