4.連語への気づきを促す指導2:文章からの連語抽出指導22早稲田日本語教育実践研究 第13号/2025/19―26図2 話す練習の教材例表2 連語抽出の指導1回目文から連語をとりだす(1)2回目文から連語をとりだす(2)3回目文章から連語をとりだす(1)4回目文章から連語をとりだす(2)5回目宿題「連語をとりだす」6回目宿題の解説動詞の活用形の使用頻度にも注意して,覚えやすいように30字以内で作成した。3-3.練習と宿題用法提示後は,学習者4名程度のグループで話す練習を行った。図2は図1の話す練習で,1は用法①,2は用法②の練習である。3は応用問題で,図2の例は未提示の用法の意味推測の問題だが,他には母語の連語との対応を問う問題などを試みた。話す練習を終えた後は,仕上げとして文の空所に学習した動詞を選択して適当な活用形と助詞を入れる練習を行った。時間内に終わらない場合は自習とし,授業後に正解を示した。宿題はその日のクラスで提示された連語から3つ選んで,短文作成を行うこととした。連語への気づきを促すため,選んだ連語を書いてから作文するように指示した。オンラインで提出された宿題は,文法の誤りなども含めて個別にフィードバックした。日本語の文章中で使用される連語への気づきを促すため,本指導では文章から必要な連語を取り出す指導を試みた。指導を始める前に本指導の位置づけを確認した。すなわち,多義動詞の用法指導は,教員が学習者に良いと考える連語を教えるものであるのに対し,文章からの連語抽出指導は,学習者が自分に必要な連語を自分で文章から取り出せるようになるためのものである。文章からの連語抽出の指導は,5回の教室指導と1回の宿題からなる(表2)。学習内容は,学習者にとって既知の内容を本指導用に再編したものである。指導は多義動詞の用法指導の本格化と同時に開始し,説明と練習を合わせて毎回10分程度で行った。学習者は本指導の学習成果を「私の連語集」(後述)として作成・発表するため,表2の指導後,オンライン授業では,各自が選んだ連語のスライドを作成して1,2回発表練習を行い,仲間からコメントをもらった。図3は表2の1回目から4回目までの教材の一部である。1回目の「文から連語をとりだす(1)」では,宿題では連語から文を作るが,反対に文から連語を取り出すこともできると説明し,動詞の連語は,辞書形で示すとした。次に図3の①の練習を行うが,これは「連絡を取る」など文中で連語の構成要素の単語が隣り合うもので,取り出すのが最も易しい連語である。2回目の「文から連語をとりだす(2)」は,図3の②の「〜ビザは,9月に切れた。」のように,下線
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