早稲田日本語教育実践研究 第13号
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早稲田日本語教育実践研究 第13号  本稿では早稲田大学日本語教育研究センターの総合科目群の「漢字1」から「漢字5」における4年間の教材開発,およびその運用について報告する。漢字科目はオンライン授業を前提としているため,開発方針として漢字の「読み」「認識」に重点を置いた。授業で扱う学習漢字の選定基準は,初級から中級前半(1〜3レベル)では教育漢字を,中級後半から上級前半(4〜5レベル)では主に日本漢字能力検定のレベル設定を参照している。また,語彙の選定においては,「日本語教育語彙表」(李・砂川 2012)に基づくレベル分けを基準とした。これらの教材には,日常生活や大学における漢字語彙の習得に加え,「早稲田大学で学んでいる」という帰属意識を高めることを目的に,オリジナリティのある要素を取り入れている。今後は,教員および受講生からのフィードバックを基に,さらなる教材のアップデートを継続して行う予定である。  キーワード: 漢字,オンライン授業,認識,教材開発早稲田大学日本語教育研究センター(以下,CJL)では,本学におけるオンライン授業の導入と促進の方向性を鑑み,総合科目群の漢字科目(1〜5レベル)のオンライン授業化について検討を重ねてきた。奇しくも2020年から拡大した新型コロナウィルスの影響により,オンライン授業の必要性がさらに高まり,本格的な開発に着手することとなった。漢字科目は総合科目群の中の技能科目であり,レベルは1〜5に分かれている。1レベルは漢字初学者の非漢字圏の受講生を対象としており,2レベルは非漢字圏と漢字圏とにクラスが分けられている。これまでの漢字科目は市販の教科書とオリジナルの副教材を用いた対面形式の授業であったが,授業形式の変更にあたり,レベルや使用教材など全面的に見直しを行う必要に迫られた。本稿では,CJL科目内において,オンライン教育の第一歩として実施することとなった漢字科目の教材開発について,その開発過程および運用を報告する。2-1.オンライン授業を想定した開発漢字科目におけるオンライン授業はリアルタイム配信形式である。対面からオンラインに移行するには授業形式に関して様々な相違点が想定されたことから,今一度,CJLにおける漢字教育について再考が必要となった。―開発過程と運用―要旨1.はじめに2.科目の方向性ショート・ノート11井下田 貴子・沖本 与子CJL漢字科目におけるオンライン教材開発

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