早稲田日本語教育実践研究 第13号
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注9センター最前線寅丸真澄・三好裕子/留学生のキャリア形成を支援する日本語教育キャリア意識を涵養し,基礎的汎用的能力,コミュニケーション能力を向上させていたことが報告された。また一方で,それぞれの実践特有の課題も見出された。今後も,実践において生じるこれらの課題を改善,解決しつつ,留学生のビジネス・キャリアとアカデミック・キャリアに寄与する日本語教育の可能性を模索していきたいと考える。 1)「日本再興戦略改訂2016」(内閣府2016)において目標とされた。 2) 近年,業種や企業の特性によっては,従来とは異なる給与体系や企業風土を有する企業が増えているが,学習者の中には日本企業をステレオタイプで捉える者も多い。 3)キャリア形成における主体性(Agency)の重要性については寅丸(2024)に詳しい。 4) 『早稲田日本語教育実践研究』第10号コラム「留学生のキャリア支援に関する懇談会を終えて」(pp. 75-78)に報告されている。 5) CJLで提供されている科目は,総合科目群とテーマ科目群に区分される。総合科目群は教科書を使用しながら四技能をバランスよく学習する科目である。これに対して,テーマ科目群は教師が独自のシラバスで特色のある実践を展開する科目群である。口頭表現,文章表現,聴解,読解,文法,語彙,社会と文化,アカデミック日本語,ビジネス日本語の9つのカテゴリーに分類されている。 6) 「アカデミック日本語」科目については,『早稲田日本語教育実践研究』第9号「[実践紹介]<特集「アカデミック日本語」>」(pp. 51-62),「ビジネス日本語」科目については『早稲田日本語教育実践研究』第10号「[実践紹介]<特集「ビジネス日本語」>」(pp. 53-64)において実践の一部が紹介されている。但し,毎学期内容が更新されるため,現在の実践内容とは異なっている可能性がある。 7) 「PBLで学ぶビジネス・キャリア7□8」については寅丸,「PBLで学ぶアカデミック・キャリア7□8」については三好が報告する。 8) 「PBLで学ぶビジネス・キャリア7□8」,「PBLで学ぶアカデミック・キャリア7□8」ともに対象学習者は7□8レベル(上級から超級)の学習者である。CJLでは,学習者が適切な履修科目を選択できるように独自のレベルチェックテストを実施しているが,学習者の自律性を尊重する教育理念により,履修登録する科目は最終的に学習者の判断に任されている。そのため,日本語レベルが異なる学習者がクラスを構成することがある。 9)キャリア形成における対話の重要性については寅丸(2024)に詳しい。参考文献小平達也(2015)「日本企業における「ダイバーシティ改革」と外国人雇用について」駒井洋(監修)五十嵐泰正・明石純一(編著)『グローバル人材」をめぐる政策と現実』pp. 154-170,明石書店.斎藤淳子(2023)『シン・中国人―激変する社会と悩める若者たち』ちくま新書.塩月恭・沈向琮(2023)「留学生の就職活動について」『早稲田日本語教育実践研究』12,9-22.ディスコキャリタスリサーチ(2024)「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する調査(2023年12月調査)」https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/01/202312_kigyou-global-report.pdf(2024年12月1日)寅丸真澄・江森悦子・佐藤正則ほか(2019)「留学生のキャリア意識とキャリア支援の「ずれ」を考える―日本語学校・短大・大学(首都圏・地方)の留学生の語りから」『言語文化教育研究』16,240-248.寅丸真澄(2024)「エージェンシーの育成を目指した対話活動の意義と課題―外国人留学生のための対話型キャリア教育の構築に向けて」『社会言語科学』27-1,63-78.寅丸真澄・吉田好美・井上直美(2025)「「わせだ日本語サポート」活動報告」『早稲田大学日本語教育実践研究』13,85-88.

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