5センター最前線早稲田大学日本語教育研究センター/CJL総合科目群オンライン化プロジェクトの展開2.本プロジェクトの概要と経緯Moodle(以下,「WM」)に設置した。学習者は本動画を視聴し,WM に設置されたワーる 2)。「21 世紀市民」および「地球市民」における最も基礎的な能力として期待されているものが,VUCA3)の時代においても,他者とともによりよい社会を創造していける主体性(エージェンシー),自律性,協働性であろう。そして,それらを基盤として社会で自己実現を果たしていくためには,問題発見解決能力,創造的構想力,批判的思考力,異文化理解力等が求められる。CJL における日本語学習の過程においても,それらを育成できる授業や教材が期待されていると考えられる。 本プロジェクトの対象科目は,「総合日本語 1」から「総合日本語 6」,「入門日本語」,「会話 1」,「会話 2」,「漢字 1」から「漢字 5」の全 14 科目であった。2021 年度に「総合日本語 1」から「総合日本語 6」,「入門日本語」は市販教科書を使用し,「会話 1」と「会話 2」,「漢字 1」から「漢字 5」はオリジナル教科書を開発することに決定した。 「総合日本語 1」から「総合日本語 4」においては,総合科目の授業内容のうち,文型学習をオンデマンド化し,文型学習動画教材(以下,「文型学習動画」,「総合日本語 1」と「総合日本語 2」は英語,「総合日本語 3」と「総合日本語 4」は日本語ナレーション付き)の作成を決定した。文型学習動画とは,これまで教員によって各クラス個別に行われていた文型の導入と説明を動画化した教材である。2022 年度末までに,「総合日本語 1」から「総合日本語 4」を完成させ,本学の LMS(Learning Management System)である Waseda クシートの課題やテストに取り組むことによって文型理解を深め,授業では文型の運用練習と多様な活動を行う。また,各クラスの WM に学習対象となる文型学習動画を設置すると同時に,CJL の授業履修者全員が他レベルの文型学習動画も閲覧できるようなシステムにしたため,学習者はレベルに関わりなく,予習や復習の際に自由に全文型学習動画を閲覧できるようになった。教科書を変更しても使用可能な汎用性とともに,学習者がいつでもどこでも,どの文型でも学習できる利便性を確保したと言える。さらに,「わせだ日本語サポート」における日本語自律学習支援(寅丸・吉田 2021)4)においても,アドバイジング・セッションでこの文型学習動画を使用できるように対応し,授業,自習,学習支援の三つの場で有効活用し得るシステムを構築した。 今後は,高等教育機関の使命として学究的な日本語能力の育成を目指し,「総合日本語3」から「総合日本語 6」においては文型学習に加え,レポート作成学習のオンデマンド化を進め,2025 年度には運用を開始する予定である。その他,「入門日本語」では,2023年度よりコース内容に即した教材と仮名の説明用動画を運用している。「会話 1」と「会話 2」では,2024 年度より新たな教材が提供される。「漢字」では「漢字 5」の教材開発を終え,2024 年度より全レベルが新教材となるなど,総合日本語科目群の授業のオンライン化は着々と進められている。 以上のように,「CJL 総合科目群オンライン化のための研究プロジェクト」は,総合科目の再構築を目指す大規模プロジェクトである。本稿では,特にその中から,2023 年度春学期に他科目に先駆けてハイブリッド化を実現し,再構築を進める「総合日本語 1」か
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