3センター最前線―ハイブリッド型授業による「総合日本語」1-4 の再構築―1.はじめに CJL では,学習者の主体性を重視した多様で開放的な科目展開と履修システムの構築を早稲田日本語教育実践研究 第 12 号 本稿の目的は,2023 年度より開始した総合科目群のオンライン化について,「総合日本語 1」から「総合日本語 4」の事例をもとに,その課題と展望を述べることである。 日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下,「CJL」)では,2023 年 4月より,総合科目群を構成する「入門日本語」,「総合日本語 1」から「総合日本語 6」の7 科目において,オンデマンドと対面によるハイブリッド型授業を開始した。「入門日本語」では週 2 コマのうち 1 コマ,「総合日本語 1」から「総合日本語 4」では週 5 コマのうち 2 コマ,「総合日本語 5」と「総合日本語 6」では週 3 コマのうち 1 コマがオンデマンド化され,そのための教材が開発された。また,すでにオンライン化されている「漢字 1」から「漢字 4」に次ぐ「漢字 5」,「会話 1」と「会話 2」では,同期型オンライン授業の教材開発が進められ,2024 年度から運用を開始する予定である。 総合科目を対象としたハイブリッド型授業と同期型オンライン授業の開発を目的とした「CJL 総合科目群オンライン化のための研究プロジェクト」(寅丸他 2022,2023)は,2021 年度より検討を開始し,2022 年度に CJL 研究プロジェクトとして承認された。本プロジェクトは,オンライン初級科目の開設(木下 2020),オンラインによるレベルチェックテストの開発(寅丸他 2021,2022,岩下他 2023a,2023b),CJL スタンダーズの開発(久保田・濱川 2022)とともに,CJL が日本語学習者(以下,「学習者」)の「世界へ向かうプラットフォーム」(池上 2023)として更なる飛躍を遂げるための基盤プロジェクトの一つである。学習者は各々の自己実現に向けて CJL で日本語を学び,「次の場所」に挑戦する。CJL は学習者の学びと生活の居場所であると同時に,学習者が未来のある世界へ向かうためのプラットフォームとしての役割を担っていると言える。そして,その教育活動の特色として挙げられるのが「主体性」「多様性」「開放性」(舘岡 2016)である。行っている。CJL のプロジェクトにおいても,その根本は一貫している。CJL スタンダーズの開発は CJL が提供する日本語科目のレベル基準の策定と整理,レベルチェックテストの開発は学習者が自身の日本語レベルに応じた履修科目を主体的・自律的に選択できるようになることを目的としていた。一方,本プロジェクトの目的は,学習内容に適した授業形態を提供することで授業の質を担保すると同時に,学習者自身による学習の進捗管理を促し,学習者の主体性と自律性を育成することであった。 センター研究プロジェクトとして承認後,本格的に教材開発と授業準備が進められた。本プロジェクト承認前から独自開発を進めていた「漢字」を除く科目については,教材開早稲田大学日本語教育研究センター 1)CJL 総合科目群オンライン化プロジェクトの展開
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