早稲田日本語教育実践研究 第12号
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2.実践の工夫と学生の反応3.まとめと今後の課題52実践の工夫としては,各自で発表メモを読む練習をするのではなく,ペアで読み合わせをしてコメントし合う場を 2 回設定し,学生同士で発表の長さの調整や内容の検討を行うようにしたことである。発表メモは形式の指定が特にない為,発表の際にそのまま読みあげればよいスクリプト形式の発表メモのフォームを担当クラス用に作成し,記入させた。そのうえで,以下のとおり発表メモの読み合わせを行った。2-1.発表メモの読み合わせ①:第 3 回活動ペアになり〔役割 A:発表メモを読む,役割 B:時間を計る,わからない箇所をコメントする〕の役割 A と B を交替しながら実施した。読み合わせの目的は,1)所要時間を正確に計測すること,2)理解を得られない箇所を知ることである。1)により「2 分 45 秒。短いね。もっと説明を書けば。」等,コースで設定されている発表の持ち時間(3 〜 4 分)に対する過不足を確認し,適切な長さへと互いの発表メモの内容を推敲し合うやりとりが生じていた。また,2)により「祭りの音楽。イメージできない。発表で,音楽をかけたら。」等,わからない箇所を共有・コメントし合うことで,教師の手を借りることなく学生同士で改善のための内容の検討がなされる様子が見受けられた。2-2.発表メモの読み合わせ②:第 4 回活動ガイダンス資料にある発表の評価項目と点数を教室のスクリーンに投影し,全員で確認した。ペアになり〔役割 A:自分の PC に発表の PPT を映しながら発表メモを読む,役割 B:時間を計る,発表の評価項目について評価する〕の役割を交替しながら発表メモの読み合わせを実施した。今回の読み合わせの目的は 1)所要時間の再確認をすること,2)学生同士で評価項目の事前評価をしてコメントし合い,内容を再検討することである。机間巡視では,時間については既に大幅な過不足は見受けられず,評価項目について率直に意見し合う様子が見られ,学生達の良いものを発表したいという意欲が感じられた。発表前に学生同士が発表内容を共有しコメントし合う場を作ることで,学生が自律的に発表の長さの調整や内容の検討・整理をしていく様子をうかがうことができた。今後の課題は,同様の実践の工夫を 3 〜 4 名の小グループで実施した場合の効果を検証すること,活動中にあまり発言しない学生への対応方法を検討することを挙げたい。参考文献独立行政法人国際交流基金編著(2022)『まるごと 日本のことばと文化 初級 2A2 かつどう』三修社.(はぎわら きみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/51―52

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