早稲田日本語教育実践研究 第12号
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2.授業の実際3.まとめと今後の課題48た,授業では,学習者の気づきを促すため,学習者が犯しがちな誤りを否定証拠として示し,考えさせることを多く行うようにした。授業シートでは,誤りやすい点についての問題(問題例:図 1,2)を出題し,その答えから規則の理解を促し,練習問題によって理解を確認させるようにした。授業は,3,4人のグループでシートの問題について考えさせた後に,解答・解説をする形で進めた。宿題は,目標の文法項目が使われる可能性の高いテーマについての 100 字以上の作文,および,学習内容のまとめと質問を書くこととした。宿題の作文で誤りが多かった点や質問のあった点について,翌週に説明した。また,復習のためのクイズを翌週に実施した。評価は,期末試験と復習クイズ,宿題の提出と授業への参加状況によって行った。2-1.クラスの様子参加者は非常に熱心で,授業シートの問題についての話し合いも活発に行われることが多かった。答えについての仮説を出し合い議論する様子や,正解することができ喜ぶ様子が見られた。理解できた学生,学習の進んでいる学生が,理解できていない学生に教える様子も見られた。また,授業では宿題の作文での誤りも取り上げ,どこが誤りか,どう直せばいいのかを考えさせたが,参加者は関心を持って積極的に取り組んでいた。2-2.授業の理解度授業の理解度を知るため,期末試験と復習クイズの結果について正答率を算出した。期末試験は,①目標の文法項目についての選択問題,②助詞の空所補充問題,③接続詞の選択問題,④テンス・アスペクトに関する語の変形問題で,平均点は 74.7 点であった。誤りの多かった問題(正答率 60% 以下)は,移動の場所を示す「を」などの助詞問題,接続詞の問題,「〜ていた」「〜てある」の形への変形問題であった。毎回の復習クイズは,正答率が概ね 80% を超えていたが,接続詞は 71.2%,助詞(3 回実施中の第 2 回)は 79.3% と比較的成績が低かった。これらの項目は,授業内容の理解度が高くなかったことが疑われる。また,復習クイズで正答率の低かった項目は期末試験でも正答率が低い傾向が見られ,復習クイズでの誤りが学びにあまり結びついていなかったことがうかがわれた。初級文法のブラッシュアップを目的に,語の持つ文法情報を重視して指導する授業を行った。学習者が誤りやすい点を問題にし,それについてグループで話し合う形式で進めたところ,活発な授業活動を実現することができた。今後の課題として,接続詞や助詞等,授業の理解が十分でなかった項目についての理解度を上げること,復習クイズでの誤りが学びに繋がるようにすべきことがあると思われた。(みよし ゆうこ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/47―48

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