注早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/43―44 3.学生の反応と今後の課題44せたうえで活動を開始した。発表は,作成した説明を前半と後半に分かれて発表するペア,対話形式にして発表するペアがほぼ半数ずつであった。質問①では学生本人が使用するためのズボン,トートバッグ,ハンモックの他,出産した友達への子供服,兄弟へのパーカー等の多彩な商品が挙げられ,学生達が短時間で様々な相手・用途を思い浮かべながら膨大な数の商品の中から日本語で欲しいものを見つけていたことがうかがえた。質問②では,「(トートバッグ)教科書やパソコンが重すぎて,今,使ってるのが切れてしまったんです。」「(ハンモック)毎日,とても忙しいですから,からだの調子が悪くなってしまったんです。夏休みはくにのビーチでリラックスしたいですから,これを買いました。」等,質問③では「このズボンは値段がたかすぎると思います。」等,質問④では「(トートバッグ)サイズは大のほうが大きくて使いやすそうです。ペットボトルとおにぎりも入れたいですから。」等,各自が現在の心情や状況をふまえながら文型を使用して商品を説明しようとする姿が見られた(下線は当該課の文型の使用箇所)。また,質疑応答は想定していなかったものの,興味深い商品について自発的に質問する学生もおり,その場でのやりとりも生じていた。日本語版ネットショッピングの疑似体験で学生自らが商品を検索し決定したことは,その過程と結果を明確に伝えたいという意欲となり,活発な表現活動に繋がっていくことを実感した。今後の課題としては他課でも学生の主体的な選択・決定の機会を設定し,文型の練習・定着のための活動がより自律的になるように工夫を重ねていくことを挙げたい。 1) クラス内で共有できる言語は英語であったため,当該ショッピングサイトは日本語版も商品名が英語・カタカナ併記で検索し易いこと,英語版もあり不明箇所は適宜,確認可能であることから紹介した。しかし,限定はせず,他のサイトでの検索も良しとした。 2) サイトの注文画面に仮入力させた場合,誤って送信し注文が成立する恐れもあるため申込用紙を使用することとした。参考文献独立行政法人国際交流基金編著(2021)『まるごと 日本のことばと文化 初級 2A2 りかい』三修社.独立行政法人国際交流基金編著(2022)『まるごと 日本のことばと文化 初級 2A2 かつどう』三修社.(はぎわら きみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
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