早稲田日本語教育実践研究 第12号
44/90

やさしい日本語の動画を視聴させた。動画の流れはアニメ→習得する文型・文法の説明→文型を会話で使った実際の登場人物による動画→発音練習である。実践方法は 100 分授業のうち 6 分を担当者の活動とし,①学生に 3 分の動画を視聴させ,②次の 3 分で,動画で初めて習ったことばと視聴した会話の文型を学生に発表してもらった。15 名前後のクラスで,半数の学生が発表した。そして,テキストの学習を始めた。具 体 例 とし て,実 際 に CJL の テ キ スト Lesson 10 で 実 施 し た 実 践 活 動 を 紹 介 す る。画の Lesson 内容も Saying what you’ve done である。習得する会話の文型は「〜にいきました」である。NHK の動画は,①アニメ視聴の後,②ます形から過去形の作り方を説明し,③最後に実際の登場人物による動画で文型を使った会話を実践している。3 分間の動画の中で使った文型は「聴きに行きました・見に行きました・食べに行きました・遊びに行きました」である。Lesson 10 で使われている文型は「よこはまであそびました・しゃしんをとりました・よこはまにいきました・ちゅうかがいにいきました」である。担当者は動画の視聴を 2021 年度春学期から導入した。授業開始と同時にテキストの学習に入るよりも,動画を 3 分間視聴することで,従来型の授業より,テキストで学習する会話の文型の使い方がより理解できると考えている。ブレイクアウトルームで学生同士の会話練習がより増え,学習者の自信につながった。学生同士の会話が活発になることで,学期開始時よりもブレイクアウトルームの人数を減らし,学生一人当たりの話す時間を増やすことができた。会話 1 の授業では,2023 年度の春学期から「わたしのことば」として,学生が「印象に残っていることば」「生活するうえで重要だと思ったことば」を 1 人 1 つずつ,チャットやパドレットで共有する活動が新たに加わった。担当者の授業では,2023 年度春学期から毎回授業の最後に約 10 分間パドレットを使い,本日の授業のまとめとして本実践をした。学生は動画視聴で覚えたことばや会話で使った文型・文法など,1 人 1 つで収まることはなく,3 つ以上書く学生もいた。また,文型と例文の両方を書く学生も多かった。ここでも,授業開始時に実践した 3 分間の動画視聴の効果を確認できた。本実践活動では,iGen 世代の学生が幼いころからスマホが生活の一部として身近にあったことに着目し,短時間の動画視聴を授業に取り入れた。結果的に,会話 1 の目標である「もっと日本語を話したい」を達成することができた。近年,NHK 以外からも様々な日本語教育に関する動画が公開されており,今後はこうした動画も活用することにより,文型・文法に則ったより実践的な会話の実力をつける授業を模索していきたい。参考文献NHK WORLD-JAPAN NEW やさしい日本語 Easy Japanese Conversation lessons  <Lesson 29 I went to listen to a piano recital. | Easy Japanese | NHK WORLD-JAPAN>40Lesson 10 の授業内容は,I can talk my experience(経験を話すことができる)であり,動3.実践の成果と今後の課題(とよだ あきこ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/39―40

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る