―iGen 世代の学生の教授法―1.動画視聴に慣れ親しんだ iGen 世代の学生に対応した授業2.実践の方法39早稲田日本語教育実践研究 第 12 号 科目名:会話 1 レベル:初級 1 ・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:16 名1995 年から 2012 年頃の間に生まれた世代は iGen(i ジェネレーション)と呼ばれている。この世代は幼いころからスマートフォンが常に生活の一部として身近にあった世代である。例えば,病院や駅の待合室では親に絵本を読んで貰うのではなく,1 人でスマートフォンを手に取り,動画を見て育った世代である。本稿ではスマートフォンによる動画視聴に慣れ親しんできた iGen 世代の学生がより楽しく,自然に文型・文法が身に付けられるよう,新たな試みとして NHK の教育動画を会話 1 の授業で用いた。その取り組みと会話 1 の授業における文法の位置づけについて紹介する。「会話 1」は早稲田大学日本語教育センター(以下,CJL)の 4 技能を総合的に学習する総合科目群に含まれるリアルタイム配信の技能科目である。話すことが苦手な学生は話すことに特化した初級の「会話 1」を選択し,日常生活場面での会話力をつけることで,14回の授業が終わると苦手意識が薄らぎ,「もっと日本語を話したい」と前向きになる。会話 1 では,100 分授業の最初の 3 分間を動画視聴にあてた。これにより,iGen 世代の学生が楽しく初級の文型・文法・ことばを使って日常に役立つ会話を練習でき,総合日本語1・2 で学んだ文法の定着と文型を使った会話の上達を目標とすることが可能になると考えた。使用した動画は,『Easy Japanese Learn Japanese | NHK WORLD-JAPAN』である。会話 1 で用いる CJL のテキストは Lesson 1 から Lesson 11 まで 11 の Lesson で構成されており,それぞれの Lesson では初級文型・文法を使って会話のパターンを 4 つ前後学習する。まず,従来の授業の流れは,最初のウォーミングアップで学生にその日に学ぶ文型を含む簡単な質問をし,授業の学習目標を明らかにする。続いて,授業担当者と学生で実際に文型を使った会話を練習する。そして,ブレイクアウトルームで学生同士が習得した会話の文型を使った練習をするというものであった。これに対し,担当者の授業では,授業開始と同時に動画を短時間視聴することが授業の導入部分となり,会話の授業で学習する文型をより理解することができると考えた。新たな試みとしてテキストの学習に入る前に,その週に学習する文型・文法に沿った NHK の豊田 晶子実践紹介動画視聴を取り入れた文型・文法の定着
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