週0123456789早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/31―382-1.対象とする学習者の想定日本語学習者の母語は様々あるが,研究の第一歩としてはまず,学習者数の多い中国語話者を選択した。中国語話者にしたもう一つの理由は,筆者自身も中国語を母語としており,本稿のような萌芽的研究を始めるに相応しいと考えたためである。劉(2022a, 2023c)は中国語の中でも西南官話という方言の話者を対象としたが,研究成果の応用範囲の拡大を目指し,本稿では中国語話者全般を対象とする。学習者の日本語レベルに関しては,発音や聴取上の問題の化石化を避けるために,初期からの音声学習が必要だと考え,初級レベルの日本語学習者にとっても理解しやすい授業構成を心がけた。2-2.授業の構成授業は Zoom を用いた同期型オンライン授業の形を取った(詳細は劉 2023b を参照されたい)。週 1 回 1 時間程度行い,オリエンテーションを除き計 10 週間実施した。学習内容は表 1 のとおりである。1 〜 3 週目に日本語のリズム,4 〜 5 週目に子音,6 〜 7 週目にアクセント,8 〜 9 週目にイントネーションを扱った。なお,子音に関しては多くの中国語話者が苦手とする清音・濁音およびナ行音・ラ行音にした。授業では目標言語である日本語だけでなく,学習者の母語(母方言を含む)も取り入れている(表 1 の 4 列目)。単元リズム子音アクセントイントネーション102-3.各週の流れ各週の流れは図 1 のとおりである。1 章で述べたように,学習者の発音と聴取における実際の変化を把握するために,発音課題と聴取課題を授業に組み込んでいる。学習者が各週の授業を受ける前には,指定の語や文を録音し,事前の発音課題(①)として提出す2.授業の設計32表 1 授業の構成学習する日本語の音声項目オリエンテーションと自己紹介リズムの基礎,促音長音,撥音拗音,リズムの総合練習清音・濁音ナ行音・ラ行音アクセントの基礎,初級名詞のアクセント人名のアクセントの規則,複合名詞のアクセントの規則イントネーションの基礎イントネーションと感情活用する母語の音声項目中国語の音節,方言の入声中国語の「伸ばす音」,鼻韻母中国語の重母音中国語の有気音・無気音,方言の無声音・有声音中国語の声母 N・L中国語の声調中国語の声調中国語の語調中国語の語調振り返り
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