早稲田日本語教育実践研究 第12号
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2.ICC で行われている留学生のための活動やイベント ICC では,お互いがメリットを感じるような双方向の交流を実践している。どちらかが21寄稿論文秋葉丈志/早稲田大学ICC(異文化交流センター)の取り組み内で家族を形成していく方向性にある。たとえば私の学部のゼミでもこれまでに何人か,日系ブラジル人家庭出身の学生が在籍している。また日本とアジア,日本と欧米などの複合的ルーツを持つ学生は,どのクラスにもいる。日本国内出身であっても,学生の文化的背景は一様でなく,「異文化交流」は日本国内の課題としても今後一層重要であろう 6)。 こうした学生の多様性を受け入れることは,より広範な母体から優秀な学生を発掘し,受け入れ,その相乗効果により大学の教育や研究の成果を向上させる可能性を秘める。ただ,多様な学生がただ居合わせればよいというものでもない。たとえば授業でも,論争のある課題について,多様な意見を持つ学生が十分に発言の機会を与えられ,建設的な議論が展開できると,より実感を伴って視野が広まったり問題の理解が深まったりするなど,教育効果が高まることが期待できる。 同様に,学生生活・学生支援においても,いかにして多様な学生のバックグラウンドを生かし,それぞれの視野を広げ,価値の高い横のつながりを創り出していくかが問われている。ICC は本学のキャンパスにおいてそうした取り組みの一端を担う存在といえる。 前述のとおり,ICC では文化的背景が異なる学生が集まり異文化を体験するための拠点となる場所・機会を学生スタッフが主軸となり職員と協働のもと提供しており,国籍や学部・大学院や学年の枠組みを超えてさまざまな学生がともに課外活動を通して異文化理解を深める場となっている。よって,「留学生」とそうでない学生という枠組みに留まらず,参加する全ての方にとって,異文化交流・理解のチャンスを生み出している。ICC が展開する主な活動の柱は以下の 2 つである。2-1.学生を主軸としたさまざまな相互交流機会の提供「してもらう」・「してあげる」という関係ではなく,対等なパートナーとして交流する中で,お互いを育む環境の提供を目指している。 ◦インターナショナル・スチューデントとローカル・スチューデント 7)の交流    言語や文化のエクスチェンジ,社会・国際問題,音楽,ダンス,スポーツ,フィールド・トリップなどさまざまな形態のイベントを通じて異文化交流の機会を提供する。現在,活動の比重としては最も大きい部分であり,この後,事例を詳しく紹介する。 ◦学生と教職員の交流    大きな大学であるがゆえに,授業以外の場では交流の機会を持ちにくい学生と教職員の交流の促進を目指す。言語や文化,また国際問題等に関心を持つ学生と教職員が,学部や研究科の枠を越えて自由に語り合う機会や,本学に滞在する多くの外国人研究者との交流の場を提供する。 ◦学生と校友の交流    全学 5 万人を超える在学生と全国 67 万人の校友との交流にもさまざまな可能性が

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