早稲田日本語教育実践研究 第12号
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寄稿論文―学生が創り,育てる異文化コミュニティ―1.ICC の理念 ICC の前身組織は 2006 年に早稲田大学国際コミュニティセンター(International Community Center)として設置され,活動内容の柱や学生スタッフを多く雇用して主体的に企画とそ19早稲田日本語教育実践研究 第 12 号 1-1.すべての学生のための「異文化交流」の場 早稲田大学 ICC(Intercultural Communication Center1),以下 ICC)は,早稲田大学が大学組織の一環として設置した,学生の異文化交流を促進する場である。現在,学生部の外局であるスチューデントダイバーシティセンター(SDC)のもとにあり,多様な学生を受け入れその活躍を支える,ダイバーシティ推進・学生支援のための大学の取り組みの一環として位置づけられる。の運営を行ってもらうなどの特徴的な運営体制はその頃から連綿と引き継がれている。その初代センター長の松園伸教授は開所に至る経緯について,世界各国の学生支援について調査をするために学生部や国際部の職員とともに欧米や韓国の大学を周った際に,韓国の延世大学校の「グローバル・ラウンジ」にアイデアを得た旨述べている。そして「学生支援の観点から,単なる遊びで終わる交流ではなく,日本人と留学生がお互いから学び合い,高め合うような仕掛けを作りたかった」と述べている 2)。 草創期を担った職員の言葉として,「International Students と Local Students の交流,教職員と学生の交流,地域と学生の交流など,『学生』を軸にした異文化・異世代の交流やコラボレーションが起爆剤となって,何らかの化学反応が起こることを期待」してきたことや,「この小さなセンターで,将来早大生がグローバルに羽ばたくための成長の土台となるコミュニティを築けたら…」といった想いが伝えられている 3)。ここに述べられたような基本的な目的意識や活動内容,学生への「想い」は今日まで変わらず引き継がれ,学生スタッフと大学職員が熱い想いを共有しながら,日々,クリエイティブな活動を紡ぎだしている。 その後 ICC は英文略称をそのままに Intercultural Communication Center と名称を変更し,今日に至っている。今でも活動の大きな柱は留学生と国内出身学生の交流ではあるが,この名称変更の背景には「国際交流」に限らず,国内の様々な文化的背景を持った学生を包摂する意味合いがあると思われる。というのも,近年は日本国内出身(国内の学校から入学した)学生であっても,外国ルーツであったり,幼少期の海外経験が豊富だったり,インターナショナルスクールに通ってきたり,学生の文化的背景は多様化している。 異文化が必ずしも国境を跨がなくとも存在する=国内も文化的に多様になりつつある,また様々な多様性があることを背景に,すべての学生にとっての「異文化交流」の場を目早稲田大学スチューデントダイバーシティセンター長 秋葉 丈志早稲田大学 ICC(異文化交流センター)の取り組み

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