早稲田日本語教育実践研究 第12号
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7.今後の課題と可能性 CJL では,それらの課題に対する対応策として,以前から,TA およびボランティアの15センター最前線早稲田大学日本語教育研究センター/CJL総合科目群オンライン化プロジェクトの展開うまくできず,教員による直接の支援が必要な学習者も,決して少なくないと思われる。 今後の課題としては,まず,学習者が自らの弱点や学習が不足している部分に気づき,より自律的に学べるようにすることがある。学習すべき点に気づかせ,それについて自ら調べる機会となるような課題の工夫ができないかと考えている。さらに,総合 4 については,文章表現の指導のためのオンデマンド教材の開発が必要であり,大きな課題である。本科目では,レポート等のアカデミックな分野の日本語への入り口として硬い文章の文体や文章の構成などを指導しているが,現在は文体の導入部分を対面授業で行い,その後はオンデマンドの課題シートにおける日本語の文章での説明と練習問題によっている。説明のための分かりやすい動画の開発が望ましいと思われる。 本稿の目的は,2023 年度より開始した総合科目群のオンライン化について,「総合日本語 1」から「総合日本語 4」の事例をもとに,その課題と展望を述べることであった。「総合日本語 1」から「総合日本語 4」におけるハイブリッド型授業は,2023 年度春学期から開始し,現在 2 学期目となる。春学期終了後に振り返りを行って課題を整理し,それらを解決・改善するための方策を検討した。秋学期はその方策を具体的に実施しており,少しずつ成果も見えてきている。 上述の各レベルにおける指摘と重複するが,ハイブリッド型授業の導入時に観察された課題は次の 3 点であったと考えられる。 (1) 学習者,教員がいかにハイブリッド型授業の形態に慣れ,授業の目的,内容,効果について十分な共通認識を得られるようになるか。 (2) 特にオンデマンド授業において,課題の質,および教員と学習者のコミュニケーションの質をいかに担保していくか。 (3)オンデマンド授業担当教員と対面授業担当教員の連携をいかに深めていくか。 これらの課題を解決・改善すべく,各レベルコーディネーターが各レベルの特性を踏まえて模索を繰り返し,対応している状況については,本稿 3 章から 6 章の報告の通りである。現状は確実に改善の方向に向かっていると言える。 無論,授業形態のみならず,学習者や担当教員,学習内容が変われば,新たな課題が生まれるため,授業改善の試みは今後も続くと考えられる。特に CJL においては,主体性・自律性を尊重した履修システムと,多様な学習者の受け入れという現代の時代的要請により,解決すべき課題もさらに複雑になっているからである。実際に以前から,学習者に履修科目を自由選択させることにより,日本語能力レベルの大きく異なる学習者が同一科目を履修するという事態が生じている。また,多様な学習者の中には,自身の学習管理が困難な者も存在している。今後は,日本語能力が不足している学習者や,学習の継続に困難を抱える学習者をハイブリッド型授業で主体的・自律的に学習させるにはどうすればよいのかという課題にも対応していかなければならない。活用や,日本語自律学習支援施設による自律学習支援を行っている。教室内外における学

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