14早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/3―17い,②文型学習動画を視聴しても内容が理解できないケースがある,③短文作成課題に対するフィードバックを見ない学習者が多い,という 3 点である。そして,その根底には,学習者が課題を期限内に提出することに追われ,個々の課題に十分に時間を割く余裕がないことがあると思われた。また,このレベルでは,日本語のみによる指示や説明では理解が難しい学習者も多く,対面授業で理解の不十分な部分を補う必要があることも分かった。 上記の問題の解決に向け,まず,文型学習動画の視聴と理解を促すため,オンデマンド授業の課題シートの改良を行った。課題シートに,文型学習動画で紹介されている例文を一つ書き取る問題を入れ,文型学習動画の内容の理解を促すため,文型の使い方や留意点の説明のポイントを文字で示した。そして,テキストの文型についての練習問題や,正しい使い方の文を選ぶ自作の問題をさせ,最後に短文を作らせる構成にした。 また,課題に対するフィードバックを生かし,それによる理解を確実にするため,オンデマンド授業と対面授業との連携を図ることにした。すなわち,対面授業において,誤りの多かった点を中心に説明の補足や確認を行うようにした。オンデマンド授業のみで対面授業を担当しない教員は,課題で誤りの多かった点や補足が必要な点を対面授業の担当者に授業記録で報告することとした。さらに,文型の理解確認のためのオンラインクイズについても,対面授業において誤りの多かった点を解説し,質問に答えるようにした。 オンデマンド授業では,課題の指示も日本語の文字によるため,指示が正確に伝わらないケースが多く,理解できているかの確認も難しい。そのため,課題の提出方法をできる限り簡潔で分かりやすくし,課題の内容より提出すること自体にエネルギーを割かれることのないようにした。また,この点においても対面授業との連携を密にし,課題提出のリマインドや課題提出が滞りがちな学習者の状況確認を対面授業で行うようにした。 上記の工夫を行ったことで,オンデマンド授業開始時に見られた問題はかなり解消することができた。オンデマンド授業の内容を対面授業で扱うことで,オンデマンド授業の内容理解がより確実になり,文型学習動画による学習が効果的に行えるようになってきている。課題の工夫,および,オンデマンド授業と対面授業を連携させ,対面授業においてオンデマンド授業の内容を確認しつつ,それを基にした活動を行うというパターンを取ることが,総合 4 の授業の特徴と言えるであろう。6-3.まとめと展望 今回のオンデマンド授業の実践を通し,オンデマンド授業を行う上での留意点が二つ明らかになったように思われる。第一に,オンデマンド教材の理解を助け,理解の程度を確認する教材の必要性である。学習者にとって学習言語を用いた動画の内容を十分に理解するのは難しく,理解を助ける工夫が必要である。今回の実践においては,課題シートの工夫がそれにあたる。第二に,対面授業との連携により,オンデマンド授業がより効果的に行えるということである。学習者に直接接することのないオンデマンド授業では,学習意欲の高い学習者でなければ,提出した課題のフィードバックをしっかりと確認し,そこから学ぶことは難しいであろう。対面授業において課題での誤りを取り上げ,指導することで,より正確な理解を促すことができる。また,オンデマンド授業による自律的な学習が
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