13センター最前線早稲田大学日本語教育研究センター/CJL総合科目群オンライン化プロジェクトの展開確立し,上級へ進むための土台を作るレベルである。目標として大きく二つの柱を立てている。一つ目の柱は身近な話題,一般的な話題を扱うことができる 4 技能の能力をつけることである。日常生活の話題から一歩進み,身近な社会問題についても話し,聞き,読み,書くことができるようになることを目指している。二つ目の柱はアカデミックな分野における日本語使用の基礎を築くことである。アカデミックな分野で使用される文体や語彙・表現を学習し,それらを用いた文章の読み書きができるようになることで,中上級,上級レベルへと進むための基礎的な能力を身につけることを目指している。教科書は『まるごと 日本のことばと文化 中級 2(B1)』を使用している。 授業形態は,週 5 コマのうちオンデマンド授業が 2 コマ,対面授業が 3 コマ(月曜日 2限,水曜日 1,2 限)である。学習内容として,上記の一つ目の柱については,テキストを用いた活動,および,口頭表現活動として発表活動を行い,二つ目の柱については,アカデミック・ジャパニーズの読解とアカデミック文型の学習,ならびに,意見文を書く活動を行っている。 オンデマンド授業は,学習対象の文型を紹介・説明する文型学習動画による学習が中心である。文型学習動画は,テキストで「文法・文型」として扱われている 70 文型と,アカデミック文型として選択した 21 文型を対象としている。文型学習動画は,「文型表紙」に続き,まず各文型の例文を提示して意味を予想させた後に,接続・意味・使い方・使用の際の留意点を日本語で説明するものである。学習者は文型学習動画を視聴し,課題を行うことになっている。テキストの文型は,対面授業でテキストの該当の課を扱う前に文型学習動画で予め学習し,アカデミック文型は,テキスト外の読解文の中で提示し,読解活動と合わせて学習する。その他,意見文の活動についても,オンデマンド授業の中で行っている。意見文の活動は導入部分を対面授業で行い,その後は主にオンデマンド授業において,書き方の説明と練習のシートにより学習を進める形を取っている。6-2.授業の特徴 本科目では,ハイブリッド化においては,文型動画視聴後の課題等のオンデマンド授業の課題の工夫と,オンデマンド授業と対面授業との連携が重要と考え,それらの点に配慮した授業運営を行っている。しかしながら,上述した点の重要性は 2023 年春学期のハイブリッド型授業開始当初には十分に認識できていなかった。授業を重ねる中で,オンデマンド授業の難しさに気づき,より効果的な学習を可能にするため,修正と工夫を行っている。 オンデマンド授業開始当初は,文型学習動画によりある程度学習者が文型の意味や使い方を理解できると想定していた。そのため,文型学習動画の視聴後の課題は,理解の確認のための短文作成,および,オンラインのクイズ(文型の選択問題)とし,理解の不十分な部分は課題に対するフィードバックによって補うことになっていた。つまり,オンデマンド授業の指導内容はオンデマンド授業内で完結できると予想し,対面授業とは連携させていなかったのである。しかし,実際に授業を行ってみると,文型学習動画の視聴と短文作成の課題,クイズのみでは十分な理解を得るのが難しいことが明らかになった。理由として,次の三つが考えられた。それは,①文型学習動画をきちんと視聴しない学習者が多
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