早稲田日本語教育実践研究 第12号
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10早稲田日本語教育実践研究 第12号/2024/3―17れる。今後はそのギャップをどのように埋めていくかが課題と言えよう。しかし,オンデマンド授業で文型や語彙の知識をインプットし,対面授業でアウトプットを行うというスタイルは,学習者が主体的かつ自律的に日本語学習を進めていく上で大きな利益をもたらすと考えられる。 「総合日本語 2」の担当教員は,初級後半レベルならではの問題を熟知しており,各々が授業運営の工夫をして,これまで培った経験を生かして効果的にクラス運営をしている。教員からは,学習者が提出したオンデマンド課題に対し,詳細かつ有益なフィードバックがなされている。しかし,オンデマンド授業の場合,学習者がその場で担当教員に質問ができないという問題もある。特にコースの後半になると文型の難易度が上がるので,対面授業でも文型に関する質問が多く,時間を費やすこともある。初級レベルの学習においては,対面授業でのきめ細かなフォローが必要である。そのため,チームティーチングでは,オンデマンド授業担当者と対面授業担当者の間で緊密な連携を取り,学習者への指導に当たっているが,今後は更なるフォローを行い,より有効な指導を実施することが求められる。言語使用者」から「自律した言語使用者」になるという過渡期の時期である。「総合日本語 2」からのこのアーティキュレーションは重要課題であり,学習方法やカリキュラムの再考だけでなく,自律的学習者を育成するための新たなアプローチが必要であると考えられる。5-1.学習の目標と内容 「総合日本語 3」は初級の学習事項を定着・拡充させながら,中級前半の文型,語彙を学習する科目である。社会の身近なテーマについて他者の考えを知り,自らの考えを発信できるようになることを目標としている。教科書は『まるごと 日本のことばと文化 中級 1(B1)』を使用している。その他にも,プレゼンテーション活動やレポート活動を通して,大学の講義や活動で必要となるアカデミック・ジャパニーズとしての日本語の学習をスタートさせる科目となっている。 1 週間のスケジュールは,オンデマンド授業がオンデマンド授業(1)とオンデマンド授業(2)の 2 コマ,対面授業が 3 コマ(月曜日 2 限,水曜日 1,2 限)の合計 5 コマである。オンデマンド授業(1)とオンデマンド授業(2)の一部では文型動画を視聴して文型学習を行う。文型学習動画は,63 文型用意されており,その他にアカデミック・ジャパニーズ文型(以下,「アカデミック文型」)が 8 文型ある。各動画は「文型表紙」「例文」「文型説明」「留意点」で構成されている。 オンデマンド授業(1)は,文型を学習する授業である。学習者は文型学習動画を視聴し,自ら様々なリソースにアクセスしながら自律的に文型理解を深めていく。教員は,学習者が提出した課題等から理解の程度を確認し,フィードバックを行っている。また,本授業は対面授業の 1 コマと連動している。対面授業では学習者の文型理解の程度を踏まえ CJL スタンダーズによれば,「総合日本語 2」は「総合日本語 3」に向けて「基礎段階の5.総合日本語 3

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