早稲田日本語教育実践研究 第12号
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9センター最前線早稲田大学日本語教育研究センター/CJL総合科目群オンライン化プロジェクトの展開までに提出することで,オンデマンド授業に出席したとみなしている。学生の提出後,担当教員は,語彙クイズの受験状況と理解度を確認し,ワークシートの添削を行う。学習者に対して個別にフィードバックを行うと同時に,クラス全体に向けたフィードバックもフォーラムを用いて行う。 対面授業では教科書【かつどう】を使用し,会話やアクティビティ等を実施することで,主に口頭における産出能力を高めることを目的とする。教員と学習者,および,学習者間でインタラクティブな活動を行うことを通じて,運用能力を高めることが目標である。 「話す活動」では,日本語でプレゼンテーションを行う。ブレインストーミングやピア活動を行い,アウトラインの作成と,PPT スライドと発表メモ(スクリプト)の作成を経て,発表を実施する。「書く活動」では 400 字から 600 字の説明文を執筆する。話す活動と同様に,アウトラインの作成から第 1 稿,第 2 稿,清書の執筆を行う。最後にまとめの活動を行い,クラスメート同士でお互いに書いたものを読みあったり,コメントを書いたりする活動を行う。 本科目で特筆すべきこととして,「書く活動」を対面授業で実施していることが挙げられる。確かにライティングは,オンデマンド授業で実施するほうがじっくりと取り組むことができ,教員がフィードバックに時間をかけられるという利点もある。しかし,初級後半レベルでは文字情報のみによるフィードバックでは伝わらないという欠点もあり,学習者からの質問や教員からのアドバイスといった双方向のやりとりが難しい。それで,教員から直接指導を受けるだけでなく,学習者間のピア活動を取り入れることで,自分が書いたものを客観的に見る視点を養い,ライティングの能力を高めることを目指している。 また,「総合日本語 2」には,まとまった分量の文章を書くのが初めてという学習者も多数存在するが,「総合日本語 3」からは,短いレポートや資料を作る,日常的な事実について内容を要約して伝える,その事実についての考えを書くといったアカデミック・ライティングの活動が始まる。そのため,主体性と自律性の育成という観点から,アカデミック・ライティングへの橋渡しをするための準備が必要であり,対面授業できめ細かく指導がなされている。 「初中級の文法」の指導は,口頭でよく使用すると思われる文型は対面授業で,書き言葉の表現に近いものはオンデマンド授業で行っている。文型学習動画での自習に加え,初中級レベルの文型を運用できるように,担当教員がオンデマンド授業の課題を作成したり,対面授業で行う活動をデザインしたりしている。4-3.まとめと展望 「総合日本語 2」の学習者のレディネスは多岐に渡っている。「総合日本語 1」から継続履修をしている学習者や,『みんなの日本語初級Ⅰ』や『初級日本語げんき 1』といった文型積み上げ式のテキストを用いた学習に慣れてきた学習者が大半を占めているが,アニメーションや YouTube といったリソースで独学した学習者もいる。そのような学習者は入門レベルから学習を開始するのとは異なり,自分なりの学習方法がある程度確立されている。そのため,新しい教科書,ハイブリッドの学習スタイルに慣れないという声も聞か

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