7センター最前線早稲田大学日本語教育研究センター/CJL総合科目群オンライン化プロジェクトの展開授業に参加する前に学習者は事前に語彙クイズを受け,語彙の予習をしてから授業に臨むことが求められる。そして,この授業では,明示的な文法の説明は行われないため,学習者には該当する課の文型学習動画を事前に視聴してから授業に参加することを勧めている。この授業は口頭練習を中心に行うものであり,学習者は授業で行われる様々な活動を通して,実践力を身に付けている。 次に,学習者はオンデマンド授業において文型学習動画を視聴し,木曜日の対面授業で行った様々な活動から推測していた文法のルールを,文型学習動画を通して自分で確認し理解する。なお,学習者は文型学習動画の視聴後,学習課題として期日までにワークシートを提出することになっているが,この課題を通して該当する文型の活用や使い方の理解を深めることができる。 翌週の火曜日の対面授業では,木曜日に行った活動を通して自分で考えていた文法のルール,および文型学習動画の文法について明示的に説明を受ける。火曜日の対面授業は,教科書【りかい】をベースにした文法の説明を中心に行う授業であり,オンデマンド授業の文型学習動画の内容を補助する仕組みとなっている。教員は,学習者が提出したワークシートのフィードバックを行い,該当文型の正しい使い方を確認し,かつ運用練習をしっかり行っている。本科目で使用している教科書【りかい】は,文法積み上げ式ではない。そのため,学習者は教科書で提示されている状況や場面で使用される文型として理解する必要がある。担当教員は既習文型を適切に混ぜながら文型説明を行うなど,ある程度文型の知識が積み上げられていくように工夫を凝らしている。 最後に,もう一つのオンデマンド授業として,火曜日と木曜日に学んだ文型の運用力を高めるため,「書く活動」を行い,2 種の作文を書かせている。一つは教科書【りかい】において課題とされている作文である。もう一つは,特定のテーマについてよりアカデミックな表現を使用して書く作文である。教科書の作文においては各テーマに従って身近で,簡単なテーマから書き始め,段階的に作文の量を増やしていきながら長文の作文に向けた練習を重ねる。そして「書く活動」では,三部構成を意識して書くこと,話し言葉と書き言葉を区別して書くこと,簡単な接続詞を適切に使用して書くことなどを念頭に置いて書く練習をする。また「コメント活動」として,学習者にはクラスメートの作文を読み,必ずコメントを書くことが求められている。このコメント活動を通して読解力とコミュニカティブな力を身に付けることを目指している。 このように本科目では,「活動→文型学習動画視聴→文法→作文(産出)」という流れで進めることで,対面授業の活動で行っている十分な口頭練習により実践的な日本語力を向上させること,およびオンデマンド授業を通して学習者の自律的な学習を促すことを実践している。3-3.まとめと展望 2023 年度からの教科書の変更とオンデマンド授業の導入に伴い,本科目の目標と授業の進め方にも変化が生じた。とりわけ,これまでの文法積み上げ式の学習からの離脱を試みていることが最も大きな変更点であると言える。現在,担当教員と学習者はこのような授業形態について戸惑っている様子が見受けられる。その一因としては本科目の新たな目
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