な学習姿勢を引き出すように努めている。2-1.テキストと授業のねらい上級前期段階の聴解として,テキストの音声が正しく再現できるのに加えて,「ワードぐらいできるでしょ」「お茶なんか出したの」「場所は押さえました」「スキルバリバリ」などの感情的なニュアンスが含まれていたり比喩やオノマトペが使われていたりする表現の意味が理解できて使えるようになることを目指している。テキストは『ハケンの品格 1』を使っているが,職場における様々な表現や文体が学生の日本語使用のニーズにも合っていて実用的なので,2007 年の作品ではあるが使い続けている。2-2.授業概要と進め方ドラマを適当な長さで分けて,1.内容理解質問,2.穴埋めクイズ形式のディクテーションシート,3.語彙リストという構成のワークシートを作成して授業をしている。1.と 2.は聴解の弱点探しにも当てている。語彙リストは丁寧な説明と日常生活で使えそうな例文を加えて読めばわかるように作成している。ワークシートでの学習と並行して,映像場面を見ながら何故この台詞が出てくるのか,発話者は相手をどう見ているかなどの点から意見交換をしている。「まだ紹介していただけないんでしょうか」の「ん」などは映像があればこその学習項目になっている。ニュース学習については,関心も学習意欲も高い反面,それを表現する日本語力が追いついていない学生が多い。特に文中での動詞の選択と形については文が少し長くなるとてきめんに誤用が増える。「文」の体裁を意識していない学生も見られる。自他動詞にしろ漢語動詞にしろ動詞を選んで助詞に呼応する適切な形に整えなければ文にならないことを早い段階から意識づけて産出技能に結びつけて指導する必要があるように感じている。ドラマ学習では習った表現を実際に使ってみたという話が学生からよく出され嬉しく思うこともあるが,学期終了後はどのように細部理解の勉強をしたらいいのか尋ねられうまく答えられなかったことも記憶に残っている。学生たちの課題に向き合って,よりよい指導や助言ができるよう努めていきたく思っている。(しおざき のりこ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/89―90 2.ドラマ学習3.学生の取り組み方と今後の課題90
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