早稲田日本語教育実践研究 第11号
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非対面対面早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/83―84  あいづち(理解の度合いを示す)理解できなかったことを確認しながら聞く話の背景を確認しながら聞く詳しい説明を求める(話を聞いたあとに質問する) 話を促す(インタビュアーとして)話の内容を予測しながら聞くことばの意味や話の内容を推測しながら聞く2-2.授業での工夫授業では,素材の中で使われているストラテジーに自ら気づくこと,気づいたストラテジーを実際に使ってみることに焦点を当てた。全 15 回のコース授業のうち,約 3 分の 2の回で対面聴解ストラテジーを取り上げ,対面聴解に重点を置いた。複数のストラテジーを組み合わせた素材を提供し,ストラテジーの組み合わせを意識させる回も設けた。コース中盤の第 7 回目と第 8 回目の授業では,学習内容を確認するためにスキット作成・発表(グループワーク)を行った。スキット作成では,聞き手の発話を意識することに重点を置き,できるだけあいづちや聞き返しなどのことばを自然に取り入れた友達同士の会話を作成するよう指示した。内容の自然さを確認するために周りの日本人に相談することも推奨した。スキット発表の評価には,自己評価,他者評価を取り入れた。授業後アンケートには,あいづちの機能や相手に能動的に働きかけながら聞くことの重要性に初めて気づき,日常生活でも使うようになったという感想があった。非対面聴解のストラテジーと対面聴解ストラテジーの組み合わせの効果を実感した学習者もいた。会話への不安感が少なくなったという感想もあり,授業の効果は概ねあったものと考える。参考文献国際交流基金(2008)『国際交流基金日本語教授法シリーズ 5 聞くことを教える』ひつじ書房.国際交流基金(2016)『まるごと 日本のことばと文化 中級 1 B1』三修社.国際交流基金(2017)『まるごと 日本のことばと文化 中級 2 B1』三修社.鎌田修監修・奥野由紀子・金庭久美子・山森理恵(2016)『生きた会話で学ぶ 中級から上級への日本語なりきりリスニング』 ジャパンタイムズ出版.川口さち子・桐生新子・杉村和枝・根本牧・原田明子(2003)『上級の力をつける 下巻 聴解ストラテジー 第 2 版』凡人社.聞き取れなかった部分を聞き返す不足している情報を確認しながら聞く共感を示したり,コメントしたりしながら聞くメモをとりながら聞く(キーワードをつかむ)視覚的な情報を参考にしながら聞く3.授業の成果について84表 1 授業で取り上げた聴解ストラテジー(くぼた よしこ,早稲田大学日本語教育研究センター)

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