早稲田日本語教育実践研究 第11号
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ニュースⅠを聞こう〜いつ・どこで・なにがあった?〜ニュースⅠシャドーイング練習などニュースⅡ〜モーラとポーズ〜ニュースⅢ〜アクセント・イントネーション〜授業の目的としては 1)日本語の音に慣れ,親しむ,2)CM のフレーズや歌を一緒に口ずさむことやニュースのシャドーイングによって拍の感覚やアクセント,イントネーションを身につけ,聞き取りにくい音を聞き分ける力をつける,3)CM でくり返される表現やニュースの 5W1H など,重要なキーワードを聞き取る,4)初級文型・語彙など既習の知識を足がかりとし,映像から内容を推測して聞き取る力を養う等を挙げている。活動は通常,1 コマの中で CM とニュース両方の活動を実施する。短く集中して聞ける素材を扱い,大事な点に絞って聞く。また,耳で聞くだけでなく,CM ソング等の「耳コピ」やニュースのシャドーイングを取り入れることで日本語の感覚をつかみ,発話にも生かせるようにする。各活動でワークシートを使用,リスニングテストやディクテーションの他,録音の提出等によって学習状況を把握し,フィードバックを行う。学期の最後には,一人ひとりが「好きな CM・ニュース」を選んで紹介する発表を行い,相互評価をする。表 1 「CM とニュースで学ぶ日本語 1―2」の活動(抜粋)第 3 週 これはなにの CM でしょうか?(繰り返されることばを聞いて何の CM かを考える)第 4 週 キャッチコピーをよく聞こう!第 5 週 CM ソングを聴く第 9 週 どれを買いますか?(様々な「食パン」等の CMを見て,各商品の主な特徴を聞き取り,比較する)第 12 週 シリーズ CM を見て,ストーリーを理解しよう ニュースⅣシャドーイング練習本科目の開講とオンライン授業開始時期が重なり,初級の新科目かつ不慣れなオンライン環境で当初は混乱した。しかし,オンラインゆえに学生たちが漢字・翻訳・字幕等のアプリを用いる等,積極的に CM やニュースと向き合い,聞き取りに取り組む姿も見られた。2 年半経ち,ようやく学習者が落ち着いて「楽しく」聞ける状況になったところで今度は初の対面授業となり,今も試行錯誤は続いている。この実践を通し,聴解は「聞かせ,聞き取らせる」だけでは不十分ではないかという思いを抱くようになった。手を伸ばせば世の中にコンテンツは溢れている。それらを活用し,学習者が楽しく主体的に「聞いていく」ことを支えたい。また,彼らの自ら聞く習慣の土台作りに助力していきたい。(もりもと けいこ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/79―80 3.授業の目的と活動の概要4.実施状況と今後の課題80

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