注ショート・ノート岩下智彦・寅丸真澄・伊藤奈津美・沖本与子・井下田貴子・三谷彩華/上級レベル学習者の日本語能力を認定するための読解・聴解オンラインテストの開発テストフォームが確定した後,合否分割点を設定した。設定方法は,ブックマーク法を参考に,まず出題項目を正答率が高い順に並べた検討用テスト冊子を用意し,次に,複数名で日本語能力が一定水準以上であると容認できる者にどの項目まで正答を求めるかについて協議を行った。協議に際しては,適切な項目数や分析結果も参照し,最終的な合否分割点の設定を行った。本稿では,2 年半におよぶ CJL レベルチェックテスト「読解」および「聴解」の開発過程を報告した。本テスト開発においては,1)テストシステムの制約を踏まえたテスト設計,2)出題基準となる語彙表の作成,3)難易度の等質な複数フォームの作成の 3 点を目的として設定した。1)については,テストシステムの特徴を考慮した出題形式を設定し,2)については,公開された日本語の語彙データベースを使用して,独自の出題基準を作成した。3)については,古典的テスト理論を使用した分析結果に基づいて,難易度の等質な複数のテストフォームを作成した。これにより,既定の受験期間であれば,日本語レベルが一定水準以上であるか否かを認定するためのテストが,場所や時間にとらわれずに受験できる環境が整備されたといえる。今後の課題としては,テストの妥当性検証の必要性が挙げられる。「読解」,「聴解」のテストは,JLPT の特に N1 を参考に開発されているが,JLPT に比べ,出題形式の種類,項目数は少なく,丁寧な検証が求められると考える。また,テストフォームの等質性についても改善の余地が残っている。今回は得られた回答数の都合により,当初予定していた信頼性の高い方法をもって,テストフォームの等質性を保証することも検討したい。 1) 1 構想・構築力,2 問題発見・解決力,3 コミュニケーション能力,4 健全な批判精神,5自律と寛容の精神,6 国際性の 6 つの資質や能力である。 参考 URL:https://www.waseda.jp/top/about/disclosure/univ_policy(最終閲覧;2022/8/8) 2) 独自の日本語レベル対照表によって,JCAT の得点から早稲田大学における日本語レベルが判定された。 3) 除いた回答は,重複受験者および 2 群に分割した際に顕著に得点が低かった者(予備調査:N=3,本調査 N=1)の回答。 4) 調査は,学期終了時に行ったため,履修科目のレベル+ 1 レベルに置き換えた。例えば,「総合日本語 6」の履修者は,6 レベル修了相当とみなし,7 レベル相当とした。参考文献今井新悟・伊東祐郎・中村洋一・菊地賢一・赤木彌生・中園博美・本田明子(2010)『J-CAT Japanese Computerized Adaptive Test 日本語能力をコンピュータで測る』山口大学留学生センター .岩下智彦・寅丸真澄・伊藤奈津美・沖本与子・井下田貴子・三谷彩華(2023)「CJL で学ぶ日本語学習者を対象とした Computer Based Test 開発−学習者による自律的なレベル選択の指標の開発過程−」『早稲田日本語教育実践研究』11,23-38. 7.まとめと今後の課題IRT を用いた等化計画からの変更が必要となったため,今後,テスト改定の際には,より77
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