作業内容た。具体的な作業として,1)を達成するため,テストシステムに適した問題形式について検討を行う。次いで,2)を達成するため,近年,公開された語彙データベースを調査し,それらに共通する語彙を選別する。最後に,3)を達成するため,複数フォームの作成に十分な項目数の作成,回答データに基づく項目分析を行う。これにより,テスト開発の事例報告としての貢献に加え,実践的には,学内の学部に所属する学習者に対する日本語科目の履修単位指導についての寄与が期待できると考える。4-1.テスト開発の手順とテストの構成概念テスト開発の手順は,野口・大隅(2014)に大規模テスト開発の流れとして示された 1)テストの設計,2)問題項目の作成,3)予備テスト,4)項目分析,5)テストの編集,6)解釈基準の作成という手順を参考に,表 1 の通り行った。作業工程テストの設計 19 秋学期19 秋〜20 秋学期項目作成予備調査20 春学期21 春〜21 秋学期本調査項目分析20 春〜21 秋学期テストの編集 21 秋学期解釈基準の作成 21 秋学期テスト開発においては,そのテストが測定する能力を規定し,構成概念として設定する必要がある。本テストの構成概念は,日本語能力試験における読解および聴解の測定対象(大隅他 2009)を参照している。本テストにおいても,読解は,(1)「読み手がテキストからの情報を読み手自身の内部でタスクに応じて再構成する行為全体」を指し,(2)読解能力は①言語知識とその使用,②内容知識とその使用,③読み行動の管理・実行に関する知識とその使用の 3 つの下位能力によって構成されると考える。この読解能力を測定可能とするためのテキストとタスクを規定して,項目を作成している。一方,聴解は,聞き手が話し手の発話を聞き,様々な知識を関連させて使用しながら,課題や目的に応じて,情報を処理し,理解していく複雑な過程と捉え,この聴解能力を測定するために内容理解と即時的な処理の大きく 2 つの問題形式を設定し,項目を作成している。4.テストの概要73ショート・ノート岩下智彦・寅丸真澄・伊藤奈津美・沖本与子・井下田貴子・三谷彩華/上級レベル学習者の日本語能力を認定するための読解・聴解オンラインテストの開発表 1 テスト開発の手順時期(年度)構成概念の検討,調査対象レベルの検討,冊子数の検討,項目数の検討,テストシステムの動作検証,受験時間の設定,解答方法の検討出題基準の作成,問題形式の検討,項目作成(聴解音声の録音を含む)実施の手順の確認,調査協力者の募集,予備調査,項目分析テストシステムの試行,学期別に異なるテストフォームを作成し,開講時期に実施調査ごとに当該学期実施のテスト結果を分析全項目の正答率および点双列相関に基づく項目特性値の検証項目分析の結果に基づいたテストの複数冊子化,出題順の検討予備調査の結果を参考にしつつ,本調査の結果に基づいた合否分割点の設定
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