岩下 智彦・寅丸 真澄・伊藤 奈津美沖本 与子・井下田 貴子・三谷 彩華要旨1.はじめにCJL)において日本語レベルの判定を目的として開発された「CJL レベルチェックテスト」CJL では,近年の学習者の増加,多様化に対応する学習環境システムの構築と早稲田大学のディプロマポリシー 1)を踏まえた自律的な学習者の育成を重要課題と定めている。Computerized Adaptive Test)(今井他 2010)が使用され,学部によっては日本語能力試「CJL レベルチェックテスト」の開発においては,学外からも受験可能であるという利71早稲田日本語教育実践研究 第 11 号 本 稿 の 目 的 は, 早 稲 田 大 学 日 本 語 教 育 研 究 セ ン タ ー に お い て 開 発 さ れ た CBT(Computer Based Test)のうち,学内の学部に所属する学習者を対象に,日本語レベルが一定水準以上であるか否かを認定するために開発された読解・聴解領域のテスト開発に関する概要を報告することである。開発にあたっては,テストシステムの制約を踏まえたテスト設計,出題基準となる語彙表の作成,項目の質の検証,難易度の等質な複数フォームの作成が目標とされた。これらの目標を達成すべく行われた 2 年半にわたるテスト設計と予備調査,本調査,テスト編集の過程を報告する。 キーワード: テスト開発,読解,聴解,集団基準準拠テスト,古典的テスト理論本稿では,早稲田大学日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下と呼ばれる複数の Computer Based Test(以下,CBT)のうち,読解・聴解領域のテスト開発過程の概要を報告する。独自の CBT 開発は,これらの課題解決に寄与する教育環境整備の一環として行われた。従来,CJL が開講する日本語科目の履修希望者には,レベル判定として J-CAT(Japanese 験(以下,JLPT)の合格級と併せて日本語科目の履修指導に活用されてきた。例えば,J-CAT で 7 レベル以上 2),または JLPT の既定のレベル(例:N1 以上)であることが証明されれば,日本語レベルが一定水準以上と認定され,各学部の規定に従って,日本語科目の必修単位数の減免などの措置を受けることができた。しかし,学内において最も広く使用された J-CAT の受験に関し,2020 年度より変更が生じる可能性が発生したため,これを契機に CJL 独自の CBT 開発が決定された。便性,学習内容とテスト項目の整合性,質の信頼性,運用の継続性という 4 点の課題を設定し,開発期間の 2 年半において,「漢字」,「文法・語彙」,「読解」,「聴解」の 4 種のテストが開発された(寅丸他 2021)。日本語レベルが一定水準以上であることを認定する基ショート・ノート上級レベル学習者の日本語能力を認定するための読解・聴解オンラインテストの開発
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