早稲田日本語教育実践研究 第11号
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2早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/1―31 考え方(Ways of Thinking)知識を応用して新しい価値を生み出す創造性とイノベーション力,問題解決,論理的に考えて問題を発見・解決するクリティカル・シンキング,自分の思考を客観的に認識して,自分の意思で学ぶ学習/メタ認知(認知プロセスについての知識)2 働き方(Ways of Working)他者に考えや感情を伝えたり,他者の考えや感情を受け取るコミュニケーション力,一人ではできないことを他者と共同で行うチームワーク力3 働くための道具(Tools for Working)情報リテラシーや ICT リテラシー4 世界での生き方(Skills for Living in the World)市民性(グローバルとローカル),時間軸全体で人生を考えて行程を考える力,文化的意識と異文化対応能力このことから,21 世紀型社会で求められる能力は,定量的な知識ではなく,創意工夫して問題を解決する能力や,人と協働して意思疎通を図る力,IT を使いこなす能力,起業家精神などであり,今後の日本の教育の課題は,それらの能力をいかに醸成していくかにあると言える。単に知識を多く持っていることは,もはや創造的な知を育むための必要条件ではなく,探究と創造のサイクルを生み出す,分野横断的な学びの体験の中でさまざまな課題を見つけ,クリエイティブな発想で問題解決を創造,実現していくための手段を身につけることが肝要となってきている。日本語教育は,これまで培ってきた能力の再開発,再教育の必要性に迫られており,きている。2024 年の導入を目指す,新国家資格「登録日本語教師」も,アクティブラーニングの知見や教授法を身に付けることが必須条件となるものと予想できるが,活動例として,グループ・ディスカッション,ピア・ラーニング,ピア・アセスメント,自己評価,反転授業,ポートフォリオ,e- ラーニング,自己モニター,自律学習,TBLT(Task-にカリキュラムに効率よく採り入れるかが問われるだろう。そうした文脈の中で,今こそ,教師のリスキリング(Re-skilling)が求められるのではないだろうか。2020 年に開催された,世界経済(ダボス)会議では,「2030 年までに地球人口のうち,10 億人をリスキリングする」と発表している。さらに経済団体連合会でも,2020 年 11 月に発表された「新成長戦略」の中で,リスキリングの必要性について触れられている。リスキリングとリカレント(Re-current)は,類似点もあるが,リカレント教育は,被雇用者が,自らの意思で,新たなことを学ぶために,「一時的に職を離れ,教育機関で学ぶ」ことが前提となり,被雇用者主体の教育活動であるが,学習意欲にムラができる可能性がある。一方,リスキリングは,「企業(雇用者)が主体となり,被雇用者全員に新たな価値を創出して2 教師のためのリスキリング研修DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するための人材戦略が不可欠となってBased Language Teaching),CLIL(Content and Language Integrated Learning)などを,いか

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