共起語の専門語(異なり)の割合37.6% ( 64 / 170)58.3% (196 / 336)60.9% (322 / 529)78.4% (163 / 208)注)下線は 1 級語彙の専門語を表す。共起語が上記資料にある専門語と同じ語形の場合,その分野の専門語とした。例えば,化学の専門連語の共起語に使用された「溶液」は,化学の上記資料にあるので,化学の専門語とするが,「溶液中」は上記資料にないので化学の専門語とは認めない。表 12 は,上記の方法で調査した結果で,( )内の分数は,名詞の共起語をとる専門連語数が分母で,そのうち専門語を共起語にとる専門連語数が分子である。共起語に専門語をとる「専門語+専門語」形式の専門連語の割合は,経済では,延べでも異なりでも 4 割以下で,4 分野のなかで最も低い。言い換えれば,経済では「専門語+一般語」形式のほうが多く,「専門語+専門語」形式はやや特殊な専門連語である。ただ,経済の共起語における専門語は,64 語中 40 語(62.5%)が 1 級語彙なので,他分野と比べれば易しい。それに対し,物理,化学,数学では,延べでも異なりでも「専門語+専門語」形式のほうが多い。特に数学では,延べも異なりも「専門語+専門語」形式が経済の 2 倍以上の割合に達し,むしろ「専門語+専門語」形式のほうが一般的な専門連語の形式といえよう。物理・化学・数学で共起語になる専門語は,1 級語彙が 3 割未満で,物理は 196 語 47語(24.0%),化学は 322 語 50 語(15.5%),数学は 164 語中 43 語(26.2%)で,いずれも難しい専門語のほうが多い。表 13 は,中心語と同じ分野の専門語を共起語とする専門連語の例を示したものである。分 野経 済物 理化 学数 学【経済】家計の所得 企業の利潤 商品の生産 / 銀行の不良債権 市場の寡占化 【物理】運動のエネルギー 波の干渉 / 交流電圧の実効値 コンデンサーの耐電圧 陽子の電荷【化学】酸素の化合物 / アルカンの異性体 塩酸のモル濃度 水酸化カルシウムの塩基 遷移元素のイオン【数学】速度の向き / コサインの加法定理 試行の根本事象 自然対数の低 直角双曲線の漸近線 /の前は,1 級語彙の専門語 2 語からなる専門連語で,/の後は 1 級語彙が 1 語,または,1 級語彙を含まない専門連語である。後の専門連語のほうが難しく感じられるであろう。早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/39―54 50表 12 名詞の共起語に占める専門語の割合共起語の専門語(延べ)の割合37.4% ( 88 / 235)62.6% (395 / 631)72.7% (944 / 1299)85.2% (415 / 487)表 13 「専門語+専門語」形式の専門連語の例
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