1巻頭エッセイ日本語教育研究科長 宮崎 里司1 VUCA の時代に「生き延びる力」と 21 世紀型スキルOECD(経済協力開発機構)教育 2030 による「生き延びる力」の分類を,筆者なりに,(Taking responsibility)早稲田日本語教育実践研究 第 11 号 2023 年現在,世界情勢や社会環境の変化など,将来の予測がつきにくい状況が顕著になる中,私たちは,今後どのように生き延びていくべきかが,これまで以上に問われている。そうした予測不可能な時代を象徴する概念として,Volatility(変動性),Uncertainty(不確実性),Complexity(複雑性)と Ambiguity(曖昧性)という,4 つの単語の頭文字から成り立つ,VUCA という造語も生まれた。また,世界最大のシンクタンクである,日本語教育の分野で読み換えると,以下のように捉えられるかもしれない。1 新しい学びや教育モデルを創造し,多様な価値を持つ異文化をオープンに受け入れる力(Creating new value)2 学習過程で起きる緊張やジレンマの中で,自らのアイデンティティの継続性のバランスをとる力(Reconciling tensions and dilemmas)3 自らの行動の将来を考慮し,正しい自己評価の下,責任をもって問題解決する能力これに加え,2010 年 ATC21s(Assessment and Teaching of Twenty-First Century Skills Project)によって 21 世紀型スキルが定義され,変革する社会で,「生き延びる力」の養成が喫緊の課題と指摘されている。21 世紀社会では,課題や正解が,比較的明確であった時代の教育アプローチでは対応できなくなり,AI や IoT などの進展による社会変革,格差,資源枯渇,サイバーセキュリティやプライバシー保護の問題,高齢化に伴う人口減少など,新たな課題に対応するために必要な能力の開発が急務となってきた。21 世紀型スキルは,このような状況下で生まれた重要な手法であるといえる。具体的には,主な 4 領域が挙げられている。学習者がめざす21 世紀型スキルとリスキリング
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