早稲田日本語教育実践研究 第11号
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中学と高校の各 1 科目の教科書だが,数学・物理・化学は,いずれも複数科目の高校教科書である。経済の専門連語の資料である小宮(2010)は,2006 年度使用の中学「公民」教科書 8冊と 2005 年度使用の高校「現代社会」教科書 16 冊の経済部分の索引からそれぞれ半数以上の索引にあるという基準で選定された経済の専門語 226 語(小宮 2007)を中心語とし,それらの教科書の経済部分の本文から抽出され,経済の専門家によって専門連語と判定された連語のうち 2 語の専門連語 527 種(重複 13 種)を小論の資料とする。527 種には「家計の所得」のように中心語になる専門語どうしの連語が重複して選定された 13 種を含む。経済のみ中学教科書からも専門連語が選定されているのは,数学・物理・化学の専門連語調査の後に中学用語の重要性が明らかになったためである。数学の専門連語の資料である小宮(2016)は,2002 年度使用の高校「数学Ⅰ」教科書26 冊,同「数学Ⅱ」教科書 26 冊,同「数学Ⅲ」教科書 20 冊の索引からそれぞれの半数以上の索引にあるという基準で選定された数学の専門語 173 語(小宮 2006a)を中心語とし,上記の教科書本文から抽出され,数学の専門家によって専門連語と判定された 2 語の専門連語 667 種(重複 130 種)である。667 種には「関数のグラフ」のように中心語になる専門語どうしの連語が重複して選定された 130 種を含む。中心語になった数学の専門語(小宮 2006a)は,「微分する」などの動詞 3)を含む。物理の専門連語の資料である小宮(2007b)は,2002 年度使用の高校「物理ⅠB」教科書 14 冊,同「物理Ⅱ」教科書 7 冊のそれぞれの索引から半数以上の索引にあるという基準で選定された物理の専門語 433 語(小宮 2006a)を中心語とし,上記の教科書本文から抽出され,物理学の専門家によって専門連語と判定された 2 語の専門連語 1256 種(重複117 種)を小論の資料とする。1256 種には「重力の加速度」のように中心語になる専門語どうしの連語が重複して選定された 117 種を含む。化学の専門連語の資料である小宮(2006b)は,2002 年度使用の高校「化学ⅠB」教科書 15 冊,同「化学Ⅱ」教科書 10 冊のそれぞれの索引から半数以上の索引にあるという基準で選定された化学用語 740 語(小宮 2005b)を中心語とし,上記の教科書本文から抽出され,化学の専門家によって専門連語と判定された 2 語の専門連語 2156 種(重複 373 種)を小論の資料とする。2156 種には「銅のイオン」のように中心語になる専門語どうしの連語が重複して選定された 373 種を含む。3-2.調査の方法高校卒業程度の 4 分野の専門連語の言語的特徴を比較し,分野間の相違点を明らかにするために,次の項目について調査を行った。①専門連語数,②中心語の段階,③中心語別の分布,④共起語の品詞,⑤共起語の難易度,⑥名詞の共起語における専門語の割合①専門連語数とは,各分野の専門連語数の総数である。専門連語数が多いほど習得が困難になるため,調査項目とした。②中心語の段階とは,専門連語の中心語である専門語の段階をさし,資料の中心語は,「中学用語」か高校初出の「高校用語」かの 2 段階に分けられる。中学用語よりも高校用42早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/39―54

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