早稲田日本語教育実践研究 第11号
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応を示したテスト情報曲線によって検討される。テスト情報量は,その値が大きいほど,その受験者特性値の測定精度が高いと解釈される。つまり,テスト情報量の低い受験者特性値付近の能力推定の精度が相対的に低いと解釈できる。テスト情報量については,各学期のテスト情報量を確認,比較した。いずれのテストもテスト情報曲線のピークは,受験者特性値が 0 よりマイナスに寄っており,平均値にあたる 0 よりやや低能力者付近の測定精度が相対的に高いことが確認された。7-3.得点区分の妥当性の検証レベル判定の基準となる得点区分は,19 年度春学期の試行調査の結果に基づいて作成したため,今後の運用に問題がないか,各学期のテスト特性曲線(図 3 上図)と受験者の能力分布(図 3 下図)を対照し検証を行った。図 3(上図)に示すテスト特性曲線は,潜在特性値とその潜在特性値から期待されるテストの素点との対応を表す曲線で,これにレベル判定の各得点区分の下限値に対応する受験者特性値を明記した。これにより,ある受験者特性値を持つ受験者がテストを受験したときに期待されるテスト得点が確認できる。図 3(下図)は,テスト情報曲線上に受験者特性値に基づく受験者の能力分布の推定密度を重ねたもので,受験者特性値に基づいたレベル別の受験者の分布が確認できる。これにレベル判定の各得点区分の下限値に当たる受験者特性値も示すことで,各得点区分と各レベルに相当する受験者の分布を確認可能となる。(上図)x 軸:受験者特性値 y 軸:期待値得点(下図)x 軸:受験者特性値 y 軸:受験者特性値に基づく推定密度(定数倍)※確率密度のパターンはレベルを表す。※ 両図は,19 春学期調査の結果を想定し,3 〜 6 レベル相当の分布を図示している。※ 架空データを用いたため,x軸の値は実際の値と異なるが,受験者の分布,および期待テスト得点(y 軸)との対応関係は,実データと変わらないよう作成した。図 3  テスト特性曲線および期待値得点(上図)および,テスト情報関数に おけるレベル判定得点区分とレベル別受験者特性値の分布(下図)IRT におけるテストの測定精度は,テスト情報量または潜在特性値とテスト情報量の対33論文岩下智彦・寅丸真澄・伊藤奈津美・沖本与子・井下田貴子・三谷彩華/CJLで学ぶ日本語学習者を対象としたComputer Based Test開発

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