こで,最終工程として IRT を用いた等化分析を行った。これにより,全 4 回の試行調査の結果を同一尺度上で表現することができるため,その結果に基づいた項目プールを作成し,難易度の均一なテストフォームを複数作成する準備資料とした。間の結果の比較が容易である」,「測定精度を細かく確認できる」,「平均点を実施前に制御できる」といった点が挙げられている(豊田 2012)。IRT の利用により,全 4 回の試行調査の結果を相互比較可能なものにし,その結果に基づく項目プールの作成を目指した。等化分析においては,1)項目分析,2)測定精度検証のためのテスト情報量の確認,3)得点区分の妥当性検証のためのレベル別受験者特性値の分布の確認を実施した。よび識別力を推定した。受験者母数は全問正答者が存在したことから EAP 推定法を採用した。分析には,Easy Estimation(熊谷 2009)を使用した。多母集団同時分析を行い,4回の試行テストに共通して出題された項目の母数が同じ値となるようにした。推定法は完全情報最尤推定法を使用し,2019 年春学期の受験者集団の推定母集団について平均値が0,分散が 1 となるよう尺度化を行った。使用したデータは,19 年度春学期〜 20 年度秋学期に行われた試行調査の回答データで,延べ 1807 名分,使用項目は全 164 項目である。7-2.項目の難易度と識別力に関する分析結果と推定精度の確認項目の質は,難易度を表す項目困難度と項目の弁別性を表す識別力から検討した。項目困難度は,幅広く分布しており,初級〜上級までの受験者に相応の項目が出題されていることが確認された。項目レベル別の平均値は,項目レベルが上がるにつれ上昇しており,項目レベルが難易度に反映されている傾向が示された。ただし,一部の項目レベルでは,同一項目レベル内で極端に易しい項目や難しい項目も散見された。識別力が 0.34 未満の項目は極めて少なく,概ね支障がなかった(図 2 参照)。注:縦軸の各層は項目レベルで上から順に 1 〜 6 レベル x 軸:困難度・識別力 y 軸:項目番号IRT は現代におけるテスト理論のスタンダードであり,その利点として「複数のテストIRT による分析には,2 母数ロジスティックモデルを採用し,項目母数として困難度お32早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/23―38図 2 項目レベル別の困難度(左図)と識別力(右図)
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