早稲田日本語教育実践研究 第11号
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2012)。CJL 日本語科目の中心となる総合日本語科目群では,J-CAT に加え,各レベルの初回授業時にテストも実施しており,学習者は,複数のテスト結果とシラバス等の参考資料を踏まえて,最適な科目を選択することができた。しかし,学習者の増加に伴い,判定時期の異なる 2 つのテストの判定結果にズレが生じるという問題が顕在化した。更に,ト開発を開始した。特徴として,学外から受験可能な利便性,学習内容とテスト項目の整合性,質の信頼性,運用の継続性という点が挙げられる。学習者は,履修科目を選択する時期に学内外において本テストを受験することが可能であり,履修予定科目や目的に応じて,「漢字」,「文法・語彙」,「読解」,「聴解」の 4 種から受験するテストが選択できる。「漢字」,「文法・語彙」については,当該科目の学習内容が反映された上で,その質については,一定の検証が行われ,繰り返し受験による項目の露出も考慮した設計がされている。本テストは,2020 年度から J-CAT に代わって運用され,総合日本語を含めた CJL 全体のレベル判定の指標として使用されている。本報告により,近年顕著に見られるテストのオンライン化および,学習内容に対応した CBT 開発の知見を共有したい。ただし,本テスト開発の特性上,収集した回答データおよび分析結果の公開には限界があるため,本稿では,実際の回答データの特徴を模した架空データ 2)を作成し,その分析結果を用いてテストの開発過程を詳述することとする。日本語教育においては,高等教育機関で学ぶ学習者が対象となるテストだけでも,日本語能力試験(JLPT)をはじめ,オンラインで受験可能な J-CAT や SPOT90(小林 2015)といった様々なテストが存在し,受験可能な状況が整っている。これらは,公的な機関による調査も行われており(文化審議会国語分科会 2021),一定の質が保証された言語テストが多く存在しているといえる。しかし,こうした状況にもかかわらず,特に 2015 年以降,日本語教育を行う複数の高等教育機関において独自のテスト開発が進んでいる(坂野他 2010,小森 2011,大和2016,小森他 2017,藤田他 2017,原他 2020)。その要因としては,ICT の活用によって採点の自動化,レベル判定作業の効率化,遠隔地における受験が可能となったこと,および学習内容と評価方法の整合性が確保できるようになったことの 2 点が挙げられる。これらの多くは,プレースメントテストとして開発され,テストの目的上,各教育機関の学習内容が考慮された事例がありつつも,基本的には,集団基準準拠テストとしての開発過程を念頭に置いて作られている 3)。実際のレベル判定は,他の観点も組み合わせた上で行われており,各教育機関の実情に即した CBT 開発が行われているといえる。本テスト開発 4)に関しては,寅丸他(2021)において,全 4 種の CBT 開発の概要を報告し,課題として 1)学内 LMS 外から受験可能な環境構築,2)総合日本語科目のレベル別学習項目との整合性の確保,3)対外的に説明可能なテストの質の担保,4)継続運用がCJL の学習内容に即したテストが期待されたことにより,2018 年秋から CJL 独自のテス「CJL レベルチェックテスト」は,CJL における日本語レベルを判定するための CBT で,2.先行研究24早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/23―38

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