早稲田日本語教育実践研究 第11号
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岩下 智彦・寅丸 真澄・伊藤 奈津美沖本 与子・井下田 貴子・三谷 彩華テスト,IRT論文―学習者による自律的なレベル選択の指標の開発過程―要旨1.はじめにCJL では,近年の留学生の増加,多様化に対応する学習環境システムの構築と早稲田大学のディプロマポリシー 1)を踏まえた自律的な学習者の育成が重要課題となっている。「CJL レベルチェックテスト」の開発以前は,J-CAT(Japanese Computerized Adaptive Test)(今井他 2010)が日本語能力判定テストとして使用されていた。J-CAT は適応型23早稲田日本語教育実践研究 第 11 号  本稿の目的は,早稲田大学日本語教育研究センターにおいて開発された CBT(Computer Based Test)のうち,日本語レベルの判定を目的とした文法・語彙領域のテスト開発について,その経緯と詳細を報告することである。本テスト開発では,到達度テストと熟達度テストとしての 2 つの機能を両立させること,および,難易度の等質な複数のフォームを作成することが目標とされた。これらの目標を達成すべく行われた 2 年半にわたるテストの設計と予備調査から,4 度の試行調査,最終的なフォームの作成までを報告する。本報告により,オンライン化が進む言語教育現場において期待されている,学習内容に即した CBT 開発に寄与したい。  キーワード: テスト開発,自律的な学習環境,集団基準準拠テスト,目標規準準拠本稿は,早稲田大学日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下 CJL)において日本語レベルの判定を目的として開発された「CJL レベルチェックテスト」と呼ばれる複数の Computer Based Test(以下,CBT)のうち,最も利用者が多い文法・語彙領域のテスト開発について,その経緯と詳細を報告するものである。2020 年に生じた COVID-19 の影響により留学生数は減少したものの,国や地域を越えた人の流動化が加速する現在,今後も留学生の増加と多様化は進行すると推測される。CJLでは,世界各地から受講する学習者が自律的に取り組めるオンラインを活用した学習環境システムを構築するとともに,教室内外において自律性を育成する日本語教育を展開している。その一環として,科目登録の段階から自由に科目を選択できるように「CJL レベルチェックテスト」が活用されている。という出題方法や受験コスト,テスト結果の信頼性の点で優れており,その得点と CJLにおける履修科目のレベルが定量的な手法に基づき関連付けられていた(今井・黒田CJL で学ぶ日本語学習者を対象としたComputer Based Test 開発

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